第195回 労働組合はなぜ必要か?-私たち若い世代の認知、組織率の低下から考える役割

新社会人のための経済学コラム

2026年5月14日

労働組合とは

労働組合とは、働く人が主体となって、賃金や働く環境を向上させるために、経営者などに対して法律上対等な立場で交渉ができる団体のことです。労働者が個別に会社と交渉をしても、給与や待遇の改善に結びつけるのは難しく、そもそもたった一人で声を挙げるには勇気が必要です。そこで重要な役割を担うのが、労働組合です。労働組合が役割を全うするために必要な権利(団結権1、団体交渉権2、団体行動権3)は、日本国憲法第28条で保障されています。
労働組合の役割は、より良い職場をつくることです。そのために、健全な労使関係を築き、組合の要求を実現させていく必要があります。例えば、春闘(春季生活闘争)と呼ばれる賃金や労働条件に関する交渉、会社の経営状況や賃金水準などについての調査・討論など、活動は多岐に渡ります。

  • 1.
    労働者が雇う側と対等な立場で話し合うために労働組合を作る権利。また労働組合に加入できる権利
  • 2.
    労働組合が雇う側と労働条件などを交渉し、文書などで約束を交わすことができる権利
  • 3.
    労働条件改善のため、仕事をしないで抗議する権利。ストライキ権

若い世代の労働組合の認知度は7割程度

労働組合の認知度は、若い世代ほど低くなっています。日本労働組合総連合会(以下、連合)は、労働組合や連合自身に対する認知度やイメージを把握することを目的として、全国の15歳以上の男女2,000人を対象に、調査「連合および労働組合のイメージ調査2025」を実施しました。その調査によると、労働組合の認知度について、81.8%の人が「知っている」と回答していますが、2022年10月に実施した前回調査に比べ、8.7ポイント減少しました。「知っている」と回答した割合を世代別にみると、「60代以上」が93.0%、「50代」が91.8%とシニア世代の認知度は9割を超える一方、「20代」が71.3%、「10代」が69.0%と世代が低くなるほど認知度は下がっていることが分かります(図表1)。

連合および労働組合のイメージ調査2025

2025年の推定組織率は16.0%と過去最低

このように、労働組合は賃金や労働条件を交渉するなどの重要な役割を担っていますが、組合の組織率が低下傾向にあります。厚生労働省の「労働組合基礎調査(2025年)」によれば、労働組合に加入している人が雇用者に占める割合を示す推定組織率は、1949年の55.8%をピークに低下を続け、2025年には16.0%と過去最低を更新しました(図表2)。これまで労働市場に参加していなかった女性や高齢者の就労が進んだことで雇用者数は増加していますが、非正規など雇用形態の多様化を背景に組合員数は緩やかに減少しています。非正規労働者は、組合加入資格がない場合に加え、加入資格があっても労働組合への認知や関心が相対的に低いうえ、組合側からの働きかけも十分でないことから、組合に加入していないケースが多く見られます。このような環境の変化を背景に、労使が十分なコミュニケーションを図るうえで、労働組合が従業員の声をより幅広く把握していくことの重要性が高まっています。

労働組合基礎調査(2025年)

民営企業の労働組合員数を企業規模別にみると、1,000人以上規模が68.3%と全体の7割弱を占める一方で、300~999人規模は12.2%、100~299人規模は6.0%、99人以下規模が2.0%となっており、労働組合員が大企業に多く分布している状況がうかがえます。中小企業の組合員が少ない背景には、人員規模の制約から組合の組織化が難しいことなどがあります。

春闘賃上げ率は高水準が続く

春闘賃上げ率(ベースアップ+定期昇給)は、大企業がけん引する形で、2024年、2025年と2年連続で5%台の高水準となりました。背景には長引く物価上昇があります。消費者物価指数(総合)は2022年度以降、日本銀行の「物価安定の目標」である2%を上回る伸びが続いています。物価高による生活コストの増加が労働者の賃上げ要求を高め、春闘での高い賃上げ率につながったと考えられます。
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」をみると、所定内給与(基本給)は、春闘賃上げ率の上昇に伴って増加しています。このことは、組合の組織率が低下しているにもかかわらず、春闘の結果が実際の給与水準に反映されていることを意味します(図表3)。

毎月勤労統計調査

労働組合は、働く人が経営者と対等な立場で賃金や労働環境の改善を交渉できる重要な存在であり、その権利は憲法で保障されています。しかし、推定組織率は過去最低を更新しており、組合員数の緩やかな減少が続いています。雇用形態の多様化への対応や中小企業での組合未結成が課題であり、労働組合による取り組みの影響は企業規模によって差が生じやすい傾向がうかがえます。また、若い世代ほど労働組合への認知度が低くなっています。より多くの働く人が恩恵を受けられるよう、組合の認知度向上と組合員の増加が求められます。新社会人にとっては、働き始めたばかりの今だからこそ、自分の職場の仕組みを知ることが大切です。まずは、自分の会社の労働組合の有無や活動内容について、確認してみてはいかがでしょうか。

<参考文献>

(ニッセイ基礎研究所 佐藤 雅之)

筆者紹介

佐藤 雅之(さとう まさゆき)

佐藤 雅之(さとう まさゆき)

株式会社ニッセイ基礎研究所、経済研究部 研究員
研究・専門分野:日本経済

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