第191回 孤独感約4割から考える“つながり”のかたち

新社会人のための経済学コラム

2026年1月22日

孤独・孤立対策の制度的な位置づけ

近年、「孤独」や「孤立」という言葉が社会的な課題として広く用いられるようになっています。これは一時的な関心の高まりではなく、2024年に「孤独・孤立対策推進法」が施行されたことからも分かるように、国として体系的に取り組むべき政策分野として位置づけられています。
政府はこの法律の背景として、人口減少、少子高齢化、核家族化、未婚化・晩婚化の進行、単身世帯や単身高齢者の増加といった社会構造の変化を挙げています。こうした変化により、かつて地域社会を支えてきた地縁・血縁といった強い結びつきに加え、職場や学校、地域活動、趣味の場などを通じた緩やかな人間関係も含め、人と人との関係性全体が弱まりつつあるとされています。すなわち、特定の関係性の衰退にとどまらず、社会全体として「つながり」そのものが希薄化してきた状況にあるといえます。
その結果、孤独・孤立は特定の人の性格や行動に起因する問題ではなく、社会環境の変化の中で広く生じうる状態として捉えられるようになっています。

孤独を感じる人の状況

では、実際にどの程度の人が孤独を感じているのでしょうか。内閣府が実施している「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」は、この点を把握するための基礎的な調査です。
図-1は、「常にある」「時々ある」「ほとんどない」「決してない」という回答区分について、令和3年度調査から令和6年度調査までの孤独を感じたことがあるかという設問に対しての回答結果の推移を示したものです。このグラフから読み取れる重要な点は、「常にある」「時々ある」を合わせた割合が、いずれの年でも4割前後で推移しているという点です。
「常にある」と回答した人の割合は毎年6~7%程度で大きな変動はなく、強い孤独感を恒常的に抱える層が一定数存在していることが分かります。また、「時々ある」と感じている人も含めると、孤独感は一過性の現象ではなく、社会の中に安定的に存在している状態であることが示されています。

図-1 孤独を感じる人の割合(出典:内閣府の公表データより作成 ※1)

図-1 孤独を感じる人の割合

また、年齢別の孤独を感じる人の割合(「常にある」「時々ある」の合計)(図-2)をみると、30~39歳が54.7%と最も高く、次いで40~49歳および50~59歳がともに52.0%で続き、また20~29歳も50.0%となるなど、多くの世代において半数以上の人が孤独を感じていることが分かります。孤立や孤独というと、孤独死や退職後の課題といった話が取り沙汰されていることから、高齢者の問題だと思われますが、若者にも強く関わるものであるということを理解しておく必要があります。

図-2 孤独を感じる人の割合(出典:内閣府の公表データより作成 ※1)

図-2 孤独を感じる人の割合

孤独・孤立が問題視される理由

孤独・孤立が政策課題として重視されている理由は、単に孤独感を抱える人が多いという点にとどまりません。孤独・孤立は、心身の健康状態の悪化や生活上の困難、就労上の問題などにも結びつきやすく、図-3に示すように、経済的な暮らしのゆとりにも影響を及ぼすことが分かります。

図-3 経済的な暮らし向き別の孤独感(出典:内閣府の公表データより作成 ※1)

図-3 経済的な暮らし向き別の孤独感

また、相談できる相手がいない状態では、困りごとがあっても表面化しにくく、支援につながるまでに時間を要する場合があります。このため、政府の重点計画では、孤独・孤立の状況を早期に把握し、必要な支援につなげる体制づくりが重視されています。
孤独・孤立を解決するための「つながり」とは、必ずしも親密な人間関係を意味するものではありません。挨拶を交わす相手がいる、困ったときに声をかけられる場があるといった、緩やかな関係性も含めて捉えられています。

居場所づくりは対策の一つの柱

孤独感と人との関わり方の関係(図-4)を見ると、直接のコミュニケーションの頻度が少ない人ほど、孤独感を感じやすい傾向が確認できます。実際、対面や直接のやり取りが「全くない」「月に1回未満」といった層では、「常にある」「時々ある」といった孤独感を抱く割合が相対的に高くなっています。このことは、孤独・孤立対策において、直接的なコミュニケーションの機会や接点をいかに確保するかが重要な視点となることを示しています。

図-4 直接のコミュニケーションの頻度と孤独感(出典:内閣府の公表データより作成 ※1)

図-4 直接のコミュニケーションの頻度と孤独感

このように、孤独感の背景には、直接のコミュニケーションの機会が乏しく、「人とのつながりを実感できない」状態が関係していると考えられます。政府の孤独・孤立対策に関する重点計画においても、孤独・孤立への対応には、単に支援制度を用意するだけでなく、人と人との関係性の中で「つながりを実感できる」環境を整えることが重要であるとされています。そこでは、顔を合わせて会話を交わす、声をかけ合うといった日常的な接点を通じて、社会との結びつきを感じられる地域づくりが重視されています。

こうした考え方のもと、国や自治体では、地域の交流拠点や相談窓口の整備など、人が自然に関わり合える場を確保する取組として、さまざまな「居場所づくり」を進めています。これらは、孤独・孤立対策における重要な柱の一つです。その中には、住まいの分野において、日常生活の中で無理なくコミュニケーションが生まれる環境を整えようとする取組も含まれています。たとえば、賃貸住宅において入居者同士や地域と緩やかにつながる仕組みを設けることで、直接的なやり取りを通じた「つながりの実感」を高め、孤独感の軽減につなげようとする研究や実践が行われています。

まとめ

孤独・孤立対策が法律に基づく国の重要な政策課題として位置づけられていること、その背景に人口減少や単身世帯の増加といった社会構造の変化があることを確認してきました。内閣府の調査からは、孤独感を感じている人が毎年およそ4割にのぼり、孤独・孤立が特定の人に限られた問題ではなく、社会の中に広く存在している状況が示されています。また、直接のコミュニケーションの頻度と孤独感との関係からは、人との関わりを実感できる機会の有無が、孤独・孤立の感じ方に影響していることがうかがえます。
こうした状況を踏まえると、孤独・孤立対策は行政による制度整備だけで完結するものではなく、日常生活の中でどのように人との接点を持てるかという視点も重要になります。身近な地域や職場、住まいの中で、挨拶を交わす、声をかけ合うといった小さな関わりが、つながりを実感するきっかけになる場合もあります。制度や支援の存在を知ると同時に、自分自身や周囲の人の「つながりの状態」に目を向けてみることが、孤独・孤立を考える上での一つの出発点になると言えるでしょう。

<参考>

(ニッセイ基礎研究所 島田 壮一郎)

筆者紹介

島田 壮一郎(しまだ そういちろう)

株式会社ニッセイ基礎研究所、社会研究部 研究員
研究・専門分野:都市・地域計画、住民参加、コミュニケーション、合意形成

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