新社会人のための経済学コラム

第187回 いま知っておきたい株価指数の話~日経平均株価とTOPIXの特徴と変化~

2025年9月11日

 ニュースで「日経平均株価やTOPIXが上がった/下がった」という言葉を耳にすることがあります。これらは、「株価指数」と呼ばれ、株式市場全体や特定の銘柄グループの株価の動きをひとつの数字で表したものです。株価指数は、企業活動の流れを知るための重要な指標であり、暮らしや仕事に関わる多くの人にとって経済ニュースを理解する手がかりになります。また、投資信託の運用成績を評価するときの基準(ベンチマーク)としても広く使われています。

 数ある株価指数のなかでも、日本で特によく知られているのが「日経平均株価」と「TOPIX(東証株価指数)」です。ここでは、この2つの特徴と、いま進められているTOPIXの見直しについて解説します。

日経平均株価とは

 日経平均株価は、東京証券取引所のプライム市場に上場する企業の中から、業種のバランスや取引の活発さを考慮して選ばれた225社で構成されます。各企業の株価に調整(株価換算係数)を加えて合計し、特定の数(除数)で割ることで算出します(注1)

 調整はありますが、株価の高い企業ほど指数に与える影響が大きいのも特徴です。たとえば、株価1,000円の企業が10%上昇すると+100円ですが、株価1万円の企業が同じ10%上昇すれば+1,000円の上昇となり、後者の方が日経平均全体を大きく押し上げます。

TOPIXとは

 TOPIX(東証株価指数)は、東証に上場する幅広い企業を対象にした株価指数です。2025年8月時点で約1,700社が採用されています。算出は各企業の浮動株時価総額(株価×市場で流通する株式数)を合計し、基準時価総額で割って指数化します。企業規模(時価総額)が大きい銘柄ほど指数への影響も大きくなるため、特に大型株の値動きが反映されやすい仕組みです。

TOPIX見直しの背景と進捗状況

 かつてのTOPIXは、東証第一部(現プライム市場)に上場した企業を自動的に構成銘柄に採用していたため、銘柄数は約2,200社まで拡大しました。しかし、その中には企業規模が小さい、あるいは市場での取引量(流動性)が少ない銘柄も多く含まれていました。

 近年、インデックス投資(注2)が広がるにつれて、TOPIXには「東証に上場する企業の動きを幅広く反映する市場代表性」だけでなく「投資に使いやすい流動性」も求められるようになりました。流動性の低い銘柄が多く含まれると指数に沿った売買が難しくなるため、見直しの必要性が高まったのです。

 そこで東証は2022年4月の市場再編に合わせ、TOPIXを市場区分とは切り離し、構成銘柄の見直しを段階的に進める方針を示しました。見直しは2段階で進められています。第1段階では、流通株式時価総額(株価×市場で流通する株式数)が一定水準に満たない銘柄を除外し、銘柄数は約1,700社になりました。これから行われる第2段階では、流動性などを基準に定期的な入れ替えを行うことで、指数としての連続性を維持しながら売買のしやすさも高めることを目指しています。2028年7月末には、銘柄数は約1,200社になる見通しです。

株価指数の特徴を知る

 日経平均株価は「代表的な225社の株価を平均した指数」、TOPIXは「従来は市場全体を反映していたが、いま行われている見直しによって“市場代表性と流動性を両立する指数”へと変化している」と言えます。

 株価指数は、日本経済を理解するための基本的な指標でありつつ、市場や投資家のニーズに応じて姿を変えていく存在です。日経平均株価とTOPIXの特徴や変化を知ることは、単に数字を追うだけでなく、社会や市場の変化を捉える力を養うことにもつながるでしょう。

<注釈>

<参考文献>

(ニッセイ基礎研究所 森下 千鶴)

筆者紹介

森下 千鶴(もりした ちづる)

株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部 研究員
研究・専門分野:株式市場・資産運用

▼ニッセイ基礎研究所ホームページ(森下 研究員)

https://www.nli-research.co.jp/topics_detail2/id=64292?site=nli新しいウィンドウ

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