新社会人のための経済学コラム

第173回 紫外線量は7月に増大、日焼け止め市場も年々拡大

2024年7月11日

はじめに

 皆様は、紫外線について気にしたことがあるでしょうか。また、紫外線対策用品に関する市場が年々拡大されているのをご存じでしょうか。新社会人の皆様が知っておくべき基本的知識として、紫外線量の変化と、紫外線対策用品に関する市場動向について概説させていただきます。

UV-B紫外線量は7月に増大、年々増加傾向

 まず、日本国内の紫外線量の変化について気象庁のデータを確認すると、2023年茨城県つくば市の日最大UVインデックス(観測値)の年間推移グラフ(※1)(図表1-a)をみると、5月から増え始め、7月に増大、8月にピークを迎えており、特に夏季期間に高いことが分かります。また、日積算UV-B量の年平均値(※2)の推移(図表1-b)をみると、1997年には13.91kJ/m2であったものが、2023年には16.96kJ/m2となり、年々増加しています。

図表1-a 日最大UVインデックス(観測値)の年間推移

図表1-b 日積算UV-B量の年平均推移(kJ/m2)

 一般的に紫外線量の増加はオゾン層の減少によるものと説明されていますが、日本の紫外線量観測地点であるつくばのオゾン全量は、1990年代から2000年代前半にかけて緩やかに増加しており、近年は大きな変化はみられていません。これについて気象庁は、紫外線を散乱・吸収するエーロゾル(大気中の微粒子)等の影響が日本国内の紫外線量の増加をもたらした主原因として考えられると説明しています。

2023年日焼け止め市場は、個数15.0%増、金額28.1%増、ECモール好調

 次に、紫外線対策用品に関する市場動向として、経済産業省の生産動態統計(※3)をみると、2023年の1月から12月における日焼け止め用品の累積出荷実績は、個数が1億3千個で前年増加率15.0%(図表2-a)、金額は約632億円で前年増加率28.1%の増加(図表2-b)を記録しております。図表2-aの販売個数を月別にみると、3月に1890万個を記録しており、夏場に備えて3月をピークに出荷実績が高くなっていることが分かります。

図表2-a 日焼け止め用品累積出荷実績(個数)

図表2-b 日焼け止め用品累積出荷実績(金額)

 また、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングの3大ECモールにおける日焼け止め市場においても(※4)、2022年と2023年の市場規模(1月~3月)を比較すると、前年増加率31.0%増で拡大しています。これは、2022年まで続いた行動制限が解除されたことによる外出頻度の増加と、晴れ日数の増加・平均気温の上昇などの気象状況の追い風を受けて需要が増加したことが影響しています。同時期の平均単価増加率も11.0%上昇し、単価の高いメーカーの販売・売上構成比が伸びたこともECモールの市場拡大の要因と推察されています。

 この3大ECモールでの共通の特徴としては、「UV」というワードが「日焼け止め」というワードより多く検索されていること、「SPF」と「PA」を積極的に検索されていることが判明しており、効能を重要視する傾向が認められています。さらに、これらECモールでの日焼け止め用品の売り上げが好調な理由として、外出機会増加による日焼け止め製品の需要に対し、実店舗で訴求しきれなかった為に、購入方法としてECが選択された可能性があることも推察されています。

実際に紫外線対策をしている割合は46.7%

 続いて、2022年8月に実施された紫外線対策に関する実態調査結果(※5)をみると、実際に紫外線対策をしている者の割合は全体で46.7%、男性が23.8%、女性が69.5%と、性別により大きく差がありました。紫外線対策に用いるグッズでは(図表3-a)、上位から順に「日焼け止め」86.1%、「日傘」44.8%、「帽子」41.1%があげられており、日焼け止めが圧倒的に高い割合を占めていました。日焼け止め用品において重視している点(図表3-b)としては、「成分と肌との相性」23.4%、「機能性」23.2%、「価格」21.6%が上位を占めていました。

図表3-a 紫外線対策グッズランキング(%)

図表3-b 日焼け止めで重視している点(%)

おわりに

 紫外線対策用品は、以前はオフシーズンであった冬場にも引き合いが始まり、年間商材となりつつあり、今後も市場の拡大が見込まれます。また、年々紫外線量が増大し、UVインデックス指標に関する情報も得られやすくなりました。新社会人の皆様も、紫外線量がピークを迎える夏本番を前に、しっかりと紫外線対策に取り組んでいきましょう。

(ニッセイ基礎研究所 乾 愛)

筆者紹介

乾 愛(いぬい めぐみ)

株式会社ニッセイ基礎研究所、生活研究部 研究員・ジェロントロジー推進室・ヘルスケアリサーチセンター兼任
研究・専門分野:母子保健・不妊治療・月経随伴症状・プレコンセプションケア等

▼ニッセイ基礎研究所ホームページ(乾研究員)

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