第2回 ESGの意義 ~必要性について考えよう~

2023年6月27日

なぜ、ESGに対する世の中の関心が高まったんだろう。その背景やESGに対する企業や投資家の意識の変化を通じて、ESGの意義について考えます。

私たちの生活にも多大なる被害をもたらす台風や大雨、極度な乾燥などの異常気象については、近年、その頻度が増し、被害も大きくなっていると感じられている方も多いと思います。その原因とされるのが地球温暖化という現象で、工業化など人間による経済社会活動によって排出される二酸化炭素の蓄積によって温暖化が進行していることが専門家によって明らかにされています。二酸化炭素の排出量を削減する努力を怠れば、温暖化の進行によって私たちの生活が食や住などの面で脅かされかねない状況となっており、地球環境を巡る危機感は世界的に高まっています。

また、世界を震撼させた新型コロナウイルスの感染拡大では、衛生管理や健康管理の大切さを再認識させられましたが、同時に、経済的に余裕がないなど社会的に弱い立場の人ほど感染拡大にともなうダメージが大きい実態が明らかとなり、格差という社会問題を目の当たりにすることにもなりました。問題の深刻さやその解決の必要性を感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ESGに対する世の中の関心が高まった背景として様々なことが考えられますが、E(環境)やS(社会)にかかわる問題が顕在化し、その解決の必要性が全世界で認知されるようになったことが大きく影響したことは間違いありません。

こうした中、企業においても、ESG問題に対して積極的に取り組むESG経営が広がっています。たとえ短期的に利益の拡大を実現できたとしても、その過程で自然環境や地域社会、取引先、労働環境などへの配慮を欠き、結果として環境汚染や地域社会の不安定化、労使間の紛争などを招くようなことになれば、事業の継続に支障を来しかねません。企業が持続的な成長を目指す上では、自然環境を含む様々な関係者の立場や利益に配慮することが不可欠との意識が経営者の間で強まっている表れだと考えられます。

企業に必要な資金を提供する投資家や金融機関の行動も大きく変化しています。ESGへの取り組みに積極的な投資先に資金を提供するESG投資が急速に拡大しているのです。もっぱら利益などの財務情報に基づいて投資先を選別する従来の投資とは大きく異なり、ESG経営の後押しを通じて、ESG問題の解決をも目指す動きと捉えられます。

企業や投資家をESGにかかわる諸問題の対処に突き動かす根底には、地球環境や経済社会の持続可能性の確保に向けた取組みが必要との思いがあります。ESGという言葉には具体性がなく、イメージが湧きにくいといった面は否めません。ただ、地球環境の保全や持続可能な経済社会の実現のためには、様々な問題に対処する必要があるとの認識を全世界で共有することができます。ESGをキーワードに持続可能性の確保に向けた取組みが全世界で進められることが期待されます。

ガバナンス 直訳すると、支配・統治、管理・運営を意味する。
企業におけるガバナンスを、コーポレートガバナンスと呼び、企業がお客様、従業員、仕入先、株主、債権者、地域社会等様々な関係者の立場を踏まえ、適切な意思決定を行う仕組みを指す。
また、実効的なコーポレートガバナンスが企業及び経済全体の発展に寄与すると考えられている。
ESG経営 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の問題への取り組みを重視した経営を指す。
利益の追求だけでなく、様々な関係者の立場や利益に配慮した経営であり、持続可能な成長に資すると考えられている。
ESG投資 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の問題への取り組みを評価した上で投資先を選別する投資を指す。
利益などの財務情報だけでなく、ESGといった財務情報以外の情報にも着目することにより、経済的なリターンの追求とともに、ESG問題の解決を目指す投資である。

(ニッセイ基礎研究所 梅内 俊樹)

筆者紹介

梅内 俊樹(うめうち としき)

株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 企業年金調査室長 年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・ESG推進室兼任
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