雇用保険とは?
加入条件や失業手当をもらえる金額などをわかりやすく解説

税制/制度

2025.06.05

雇用保険とは、失業中の生活を経済的に援助したり、能力開発を促進したりする役割を担う保険です。しかし、雇用保険が実際どのような保険で、どのような場合に何の手当をいくら受けられるのか良くわからない方もいるのではないでしょうか。

この記事では、雇用保険の概要や加入条件、失業手当がもらえる時期や金額について簡単に解説します。また、雇用保険法改正にともない、2025年4月より順次施行される内容も合わせて紹介します。

<この記事でわかること>

  • 雇用保険は労働者の雇用維持および生活の安定を目的とする公的保険
  • 雇用保険には「失業手当」のほか「教育訓練給付金」や「育児休業給付金」など、複数種類がある
  • 雇用保険は原則として強制加入であるが、雇用期間と週労働時間数の加入条件がある
  • 本記事は2025年4月時点の制度内容に基づいて作成しています。制度内容は変更になる場合があります。

雇用保険とは

雇用保険とは公的保険制度のひとつで、失業や子を養育するための休業をした場合の所得保障など、労働者の雇用維持や生活の安定を目的とする保険です。加入手続きは雇用主(会社)がおこないますが、要件を満たす労働者は雇用主を通じて必ず加入することになります。

雇用保険の種類

雇用保険から支給される手当(給付金)にはさまざまな種類があります。そのなかでも代表的なのが、失業時の生活を支える「基本手当」、いわゆる失業手当です。失業後の再就職を促進するための「技能習得手当」や、再就職先が決まった後の条件に応じて支給される「就業促進手当」などもあります。

また、キャリアアップやキャリアチェンジを目指して指定の教育訓練を受講・取得した場合に支給される「教育訓練給付金」は、一定の要件を満たしていれば、失業者・在職中の労働者のどちらも受けられます。

育児休業中に受けられる「育児休業給付金」や、介護休業者に対する「介護休業給付」も雇用保険から支払われるお金です。

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【2025年4月~順次施行】雇用保険法の改正について

雇用保険の制度は「雇用保険法」に基づき実施されていますが、2024年にこの法律の一部改正が決定しました。2025年4月から、適用範囲や給付率など改正後の内容が順次施行されることになっており、場合によっては雇用保険から受け取れる金額が増加する場合があります。

以下からは、雇用保険法改正後の情報も併せて紹介します。

雇用保険の加入条件

雇用保険は政府が管掌する強制保険で、雇用されて働く人を対象としています。しかし、加入対象となるには以下の条件を満たす必要があります。

  • 雇用期間が31日以上(見込みを含む)ある
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上ある(2028年10月からは「週10時間以上」)

これらの条件に当てはまれば、原則としてパートやアルバイトで働く人も加入対象です。ただし例外もあり、たとえば高校生や大学生など学生の場合は加入対象となりません(卒業前に就職して卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定の学生や、休学中の学生は加入することがあります)。

なお、雇用保険は、65歳以上の人など一部例外はありますが、基本的に1人につき1つの事業所でしか加入できません。ダブルワークなどをしている人の場合、上記の雇用期間や所定労働時間の条件は、生計を維持するうえでメインとなる給料を得ている事業所において判断されます。

失業手当がもらえる時期・金額

ここからは、雇用保険から受けられる複数の手当のうち失業(退職)したときの基本手当、いわゆる「失業手当」について受け取れる条件や時期、金額の計算の仕方などを解説します。

失業手当を受け取る条件は?

失業手当は雇用保険に加入していた人が失業すれば必ず受け取れるわけではなく、受け取るためには以下の2つの条件を満たすことが必要です。

  • 就労の意志と能力があり、転職活動に取り組んでいる
  • 一定以上の被保険者期間がある

ここでいう「転職活動」とは、ハローワークで求職の申込みをしたうえで、求人に応募したり、職業相談や面接を受けたりすることです。原則4週間に1回のペースでハローワークへ行く「認定日」において、転職活動をしていることを証明します。自身でインターネットなどの求人情報を閲覧したり、知人の紹介を受けたりするだけでは失業手当を受けるための転職活動にならないため注意しましょう。

失業手当を受けるために必要な被保険者期間は、退職の理由や状況によって異なります。たとえば、キャリアチェンジを目指して自ら退職するような場合、離職日以前2年間に12カ月以上あることが必要です。しかしながら、解雇や倒産、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことなど会社側の都合による場合は、離職の日以前1年間に通算で6カ月以上の被保険者期間があれば支給対象です。

失業手当はいくらもらえる?

失業手当として1カ月当たりにもらえる金額は、一般的に直近6カ月間に支払われた月収の50〜80%相当額です。失業手当の支給総額の目安を立てたい場合は、以下の手順で計算しましょう。

01賃金日額を計算

まずは以下の式に当てはめて「賃金日額」を求めます。

賃金日額=離職した日の直前の6カ月間の賃金合計額÷180日

このときの賃金合計額は毎月決まって支払われる給与のことで、賞与や退職金などは含まれません。

02基本手当日額を計算

算出された賃金日額をもとに「基本手当日額」を計算します。

基本手当日額=賃金日額×給付率(80~50%)

給付率は賃金日額によって変わります。

離職時の年齢が59歳以下の場合、賃金日額と給付率の関係は以下のようになります。

賃金日額 給付率
5,200円未満 80%
5,200円以上 12,790円以下 80~50%
12,790円超 50%

出所:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和6年8月1日から~」をもとに筆者作

ただし、基本手当日額には下限額と上限額があり、給付率を乗じて算出された額が下限額未満、あるいは上限額以上となる場合には、下限額または上限額が基本手当日額となります。

離職時の年齢 基本手当日額の上限額 基本手当日額の下限額
29歳以下 7,065円 2,295円
30~44歳 7,845円
45~59歳 8,635円

出所:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和6年8月1日から~」をもとに筆者作表

03給付期間を確認

次に、給付期間(日数)を確認します。

自己都合退職や定年、契約期間満了などの理由で退職した場合は、年齢に関係なく雇用保険の被保険者であった期間によって決まります。

10年未満 10年以上20年未満 20年以上
90日 120日 150日

出所:ハローワーク「基本手当の所定給付日数」をもとに筆者作表

一方、倒産または解雇等によって失業した人(特定受給資格者や就職困難者)は、離職時の年齢および雇用保険の被保険者であった期間によって決まり、最低90日分、最高360日分です。

04支給総額を計算

基本手当日額と給付日数がわかれば、失業手当の支給総額がわかります。

失業手当の支給総額=基本手当日額×給付日数

失業手当がもらえるのはいつ?

失業手当は申請してから7日間の待機期間を経た後に支給手続きが開始されます。しかし、支給手続きの流れのなかで失業認定などもあり、受給までには通常の場合で約2カ月、早くても約1カ月かかり、すぐにもらえるわけではありません。退職後、勤務先から離職票を受け取ったあと、できるだけ速やかにハローワークに持参して求職の申込みをおこない、受給資格の決定を受けましょう。
退職理由による失業手当支給までのスケジュールは以下のとおりです。

会社都合・定年・契約期間満了など 自己都合退職
7日間の待期期間経過後の失業認定日から、通常5営業日 7日間の待期期間+給付制限期間(※)経過後の失業認定日から、通常5営業日
  • 2025年3月31日まで:2カ月間
    2025年4月1日から:1カ月間

再就職が決まるまでは、どちらの場合も原則として4週間に1度、失業の認定と受給を繰り返します。

雇用保険についてのよくある疑問

最後に、雇用保険についてのよくある疑問を紹介します。

失業手当と再就職手当の違いは?

失業手当(基本手当)は、就労の意志と能力があり、転職活動に取り組んでいる人が失業期間中にもらえる手当です。一方、再就職手当は、基本手当の受給資格の決定を受けた後、所定給付日数の3分の1以上を残して再就職した場合にもらえる手当です。再就職後に基本手当がもらえなくなる代わりに、支給残日数の60~70%相当額が支給されます。

雇用保険と社会保険の違いは?

雇用保険は失業給付などに関する制度で、社会保険は厚生年金保険・健康保険・介護保険からなる保険制度の総称です。また、雇用保険は労災保険と合わせて「労働保険」といわれますが、広義では厚生年金保険や健康保険などと合わせて社会保険と呼ばれることもあります。

社会保険 全国民を対象に、病気・ケガ・老後などのさまざまなリスクに備える保障
  • 医療保険(国民健康保険・健康保険)
  • 年金(国民年金・厚生年金保険)
  • 介護保険(40歳以上)
労働保険 労働者に起こり得るリスクに備える保障
  • 雇用保険
  • 労災保険

まとめ

雇用保険は労働者の雇用維持や生活の安定を目的とする公的保険で、正社員か非正規社員にかかわらず、一定条件を満たす労働者は必ず加入する保険です。雇用保険からの手当(給付)にはさまざまなものがあり、代表的な手当として基本手当(失業手当)があります。失業手当の支給総額は、退職理由や離職時の年齢、雇用保険の被保険者期間などによって変わり、また退職してから手当をもらえるまでの期間も異なります。退職後の生活費の不安を軽減して、求職活動ができるよう速やかに手続きしましょう。

監修者プロフィール

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士

柴田充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。

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