障がい専門の「社会保険労務士」が伝えたい、安心した暮らしのために。
病気/ケガ
2024.05.17

誰しもが健康で何不自由ない日常生活を送ることを望んでいると思います。しかし、何等かの理由で人生設計が大きく変化してしまったり夢や希望を諦めなければならないことも少なくありません。
今から考えておくべきことや準備しておくべきことは何か。
今回お話を伺ったのは、障がいにより生活に困ってしまった多くの方々を見て来た、障害年金等を専門とする社会保険労務士『白石美佐子先生』です。「まずは知識を得ることが大事」と言う白石先生に、安心して暮らしていくにはどう備えたらいいのかを、具体例とともに教えていただきました。
監修者プロフィール

愛知県在住(広島県出身)
伊予銀行 社会保険事務所
社会保険労務士(障がいを専門)
白石 美佐子 先生
総務省年金記録確認愛知地方第三者委員会の経験を活かし、障害年金を専門業務とする。
- ・NPO 法人 愛知県精神障害者家族会連合会 顧問
- ・脳脊髄液減少症認定社会保険労務士
- ・認定NPO法人 脳脊髄液減少症患者家族支援協会 元理事
- ・NPO法人 障害年金支援ネットワーク 理事
若い人も他人事ではない「身体障がい」を負うリスク
― そもそも若い人でも障がいを負うことはあるのでしょうか?
年齢は関係なく、障がいを負う可能性は誰にでもあります。活動的な20〜30代の若い人が、スポーツ中のケガや不慮の交通事故により「身体障がい」を負い人生が大きく変わってしまったケースも見受けられます。また、ケガで無くとも、心疾患や脳血管疾患等にかかって日常生活に支障をきたすケースもあります。この様な場合、今と同じ様には働けなくなってしまう可能性も少なくありません。

スポーツ中の不慮の事故で、脊髄を損傷したり、首や頭の外傷等から、寝たきりの状態になったり、ある日突然、心筋梗塞を発症し、歩くだけでも息切れやめまいが出て、働けない状態になったり、車いす生活を余儀なくされたりする方は若い人にもいらっしゃいます。
身体障がい状態になる原因のうち、最も多い53.5%は心臓の心疾患や脳血管疾患等によるものです。次に多いのが16.3%で事故やケガによるものとなっております。
身体障がい状態になる原因
病気が最も多く、次いで事故・ケガが多くなっています。

- 出典:日本生命調べ2023年度「インターネットアンケート」の調査結果より作成
働けなくなって収入が減ったとき、想像以上にお金は必要
― 自分が障がい状態等になってしまうことを想像する方は少ないのでは?
想像している人はほとんどいないと思います。身体障がい状態や要介護状態になってしまうと、初期費用に加えて継続費用への備えも必要になることが考えられます。
生活形態も変化しますが、それを支える収入が減ることを想像している方はさらに少ないと思います。身体障がいや要介護の状態になると日常の動作だけでなく少しの移動すらままならなくなることも考えられ、これまでと同じ働き方ができなくなり収入が減ってしまうことが予測されます。
初期にかかる費用(例)
![要介護2 Hさん[ 自力での歩行が困難 ] 住宅改修費 約75万円 介護用ベッド購入費 約20万円 等](/kojin/contents/article/0029/img/index_im05.png)
- ※記載の金額は、身体障害者手帳、公的介護保険制度、障害年金制度等の公的保険制度等を利用した場合は利用後の金額をもとに算出しています。
- 出典:日本生命調べ2023年度「インターネットアンケート」の調査結果より作成
継続的にかかる費用(例)

- ※記載の金額は、身体障害者手帳、公的介護保険制度、障害年金制度等の公的保険制度等を利用した場合は利用後の金額をもとに算出しています。
- 出典:日本生命調べ2023年度「インターネットアンケート」の調査結果より作成
また、生活に困ったことで、家庭の崩壊・離婚等、様々な問題が起こることも考えられます。その様な方々を何人も見て参りました。安心できる生活のためには、やはり経済的な備えは必要だと感じております。
まずは知識を得よう。公的制度を学び、そのうえで必要な備えを
― どう備えるべきかを具体的に教えてください。
まずは国の公的制度と仕組みを知り、知識を身につけましょう。障がい状態となってしまった方に実際に会ってみると、そもそもの社会保障制度等の知識・情報が至らないと感じる方が多いです。
また、生活維持だけでも大変な状態になる方も多いので、そこから社会保障制度等を学ぶ時間を用意することも難しく気持的にも余裕が持てなくなる方も少なくありません。今から知識を得ることはリスクに備える第一歩だと思います。
ほとんどの方が国民年金に、会社員等の方は厚生年金にも加入しています。この制度の中に、障がいへの保障が含まれていることを知らない方が少なくありません。年金には、老後にもらえる老齢年金だけでなく、障がい年金や遺族年金等様々な保障が含まれています。
まずは、自分や家族が、障がいや介護状態等になった場合に適用される公的制度を学びましょう。おそらく、どの制度であっても実際の受給金額は想像していた金額とギャップがある場合も予想されます。また、手続等に時間を要することも多く、受給は半年後や一年以上経ってからというケースもあります。
公的制度の基本的な知識を学び、そのうえで必要な備えを民間の保険を利用してカバーします。豊かな生活のためには自助努力とお金が必要です。自分の身は自分で守る必要があると思います。
人生のアクシデントに遭った時、夢や希望等を持って自分らしく生きるためにも、基本的な公的制度や民間保険の存在をもっと知っていただきたいです。
まとめ
就労不能時の備えが、明日への安心につながります。まずは基本的な知識を得たうえで万一の時の資金不足や生活費の増加に備えて、民間保険も考えてみるのはいかがでしょうか。
- ※本記事は、白石先生からいただいたコメントを当社にて編集して掲載しています。