【よくわかる「脳卒中等」のメカニズム】
2024.08.30
脳卒中等の脳血管疾患とは
脳の細胞が破壊される危険な病気、脳血管疾患の概要をご紹介します。
血管が「詰まる」、
または「破れる」病気
脳は私たちの生命活動をはじめ、思考や感情、言動などをコントロールしている大切な器官です。その脳に酸素と栄養を運ぶために張り巡らされている血管が詰まる、もしくは破れることによって脳細胞が破壊される病気が脳血管疾患です。

かつては死亡原因1位、
後遺症が残る可能性も
脳血管疾患は、「突然死」につながる可能性もある怖い病気で、日本では戦後の1951(昭和26)年から1980(昭和55)年まで死因の1位でした(現在はがん、心疾患、老衰に次いで4位*)。仮に命をとりとめても重い後遺症が残ることが多く、その点でも怖い病気といえます。後遺症は、半身麻痺や言葉の障がい、視覚障がい、脳機能障がいなど様々です。
*出典:厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」
要介護5となった主な原因

出典:厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」
※ 「要介護5」は介護を必要とする度合がもっとも高く、生活全般に介助を必要とする状態
特に危険な「脳卒中」は3種類
脳血管疾患は脳の血管が詰まる虚血性と、血管が破れる出血性の2つに大別されます。虚血性の代表例が「脳梗塞」と「一過性脳虚血発作(TIA)」、出血性の代表例が「脳内出血」と「くも膜下出血」です。また、脳の動脈にできる膨れたコブを脳動脈瘤と呼びます。これが大きくなると、破裂してくも膜下出血になります。
これらのうち、脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血の3つは「脳卒中」と総称されることもあり、特に危険な病気です。体の片側に麻痺やしびれが起きる、ろれつが回らなくなる、歩けなくなる、激しい頭痛がする、といった症状に突然襲われます。

脳卒中
脳卒中(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)の特徴や症状などを解説します。
患者数、死亡者数とも脳梗塞が最多
脳卒中の主な病気のうち患者数でもっとも多いのが脳梗塞で約8割を占め、次いで脳内出血が約14%、くも膜下出血が約4%です。脳血管疾患の死亡者に占める割合でも、脳梗塞が5割強でもっとも高く、次いで脳内出血が約3割、くも膜下出血が約1割の順になっています。
脳卒中の主な病気ごとの総患者数と比率

出典:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況」
脳血管疾患の死因簡単分類別にみた割合

出典:厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」
脳卒中の代表的な症状は5つ
脳卒中のうち、脳梗塞と脳内出血は症状がほぼ共通しており、もっとも多いのが片方の手足や顔の半分が動かなくなる片麻痺です。次に多いのが言葉の障がいで、突然ろれつが回らなくなったり、相手の言葉を理解できなくなったりします。このほか、歩行などの障がいや視野の異常が起きることもあります。
これに対して、くも膜下出血の場合、これまで経験したことがないような激しい頭痛が最大の特徴。「ハンマーで殴られたような」と表現する人がいるほどの激しい痛みです。重症の場合は激痛に加えて意識障がいや嘔吐などを伴う場合もあります。
これに対して、くも膜下出血の場合、これまで経験したことがないような激しい頭痛が最大の特徴。「ハンマーで殴られたような」と表現する人がいるほどの激しい痛みです。重症の場合は激痛に加えて意識障がいや嘔吐などを伴う場合もあります。
脳卒中の主な症状

参考:(公社)日本脳卒中協会ホームページ「脳卒中の主な症状」
公的介護保険対象の「特定疾病」
国の公的介護保険制度で要介護(要支援)認定を受けられるのは、原則として65歳以上の第1号被保険者に限られますが、国は例外として40~64歳の第2号被保険者が要介護(要支援)認定を受けられる病気を特定疾病として定めています。2023年12月末現在、16の病気が認められており、脳卒中を中心とした脳血管疾患もそのうちのひとつです。
公的介護保険制度の「特定疾病」とは

3つのタイプがある脳梗塞
脳卒中の中で患者数、死亡者数ともにもっとも多い脳梗塞には3つのタイプがあります(表参照)。
このうち、アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞は脳や首にある血管の動脈硬化が原因です。一方、心原性脳塞栓症は、不整脈の一種である心房細動などによって心臓にできた血栓が脳に運ばれて詰まる異質な脳梗塞で、死亡率が3つの中でもっとも高く、より危険な脳梗塞といえます。
いずれも動脈硬化につながる高血圧がもっとも重大なリスク要因と考えられており、このほか糖尿病や脂質異常症、不整脈がある人、喫煙している人も注意する必要があります。
脳梗塞の症状でもっとも多いのは体の左右どちらかが麻痺する片麻痺です。また、発症前にその前触れともいえる一過性脳虚血発作(TIA)を起こすこともあります。
このうち、アテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞は脳や首にある血管の動脈硬化が原因です。一方、心原性脳塞栓症は、不整脈の一種である心房細動などによって心臓にできた血栓が脳に運ばれて詰まる異質な脳梗塞で、死亡率が3つの中でもっとも高く、より危険な脳梗塞といえます。
いずれも動脈硬化につながる高血圧がもっとも重大なリスク要因と考えられており、このほか糖尿病や脂質異常症、不整脈がある人、喫煙している人も注意する必要があります。
脳梗塞の症状でもっとも多いのは体の左右どちらかが麻痺する片麻痺です。また、発症前にその前触れともいえる一過性脳虚血発作(TIA)を起こすこともあります。
3タイプの脳梗塞

血圧コントロールが重要な脳内出血
脳の血管が破れて脳内に出血が起きる脳内出血は、かつては脳卒中の中で死亡者数がもっとも多い病気でした。それは今以上に高血圧を放置している人が多かったためと考えられており、塩分制限や血圧をコントロールする人が増えるにつれて減少傾向にあります。死亡者数は60年前に比べて3割弱に減りました(グラフ参照)。
今も高血圧が最大のリスク要因であり、血圧コントロールが最大の予防策です。
今も高血圧が最大のリスク要因であり、血圧コントロールが最大の予防策です。
脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血の死亡者数の推移

出典:厚生労働省「令和 4 年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」
死亡率がもっとも高いくも膜下出血
くも膜下出血は、脳を覆うくも膜と軟膜の間のすきま(くも膜下腔)に血があふれ出す病気です。脳内の圧が高まって十分な血液を供給することが困難になり、脳の機能が正常に働かなくなります。もっとも多い原因は脳動脈瘤の破裂で、症状の最大の特徴はこれまで経験したことのないような激しい頭痛です。
くも膜下出血は、患者数、死亡者数ともに3つの脳卒中の中でもっとも少ないのですが、発症した人の死亡率はもっとも高く、また再出血を起こせばさらに死亡率が高くなるといわれる危険な病気です。
くも膜下出血は、患者数、死亡者数ともに3つの脳卒中の中でもっとも少ないのですが、発症した人の死亡率はもっとも高く、また再出血を起こせばさらに死亡率が高くなるといわれる危険な病気です。

脳動脈瘤と一過性脳虚血発作
脳卒中に進行する可能性がある危険な2つの病気をご紹介します。
くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤
脳の太い動脈にできるコブを脳動脈瘤と呼びます。血管の分かれ目にできやすい傾向があります。この脳動脈瘤が破裂して出血する病気がくも膜下出血です。脳動脈瘤のすべてが破裂するわけではありませんが、コブが大きな場合やできてから年月が経った場合はくも膜下出血を起こす可能性が高くなります。

脳梗塞の前触れ、一過性脳虚血発作
体の片側の麻痺など、脳梗塞と同じような症状が現れて短時間のうちに消失してしまうものを「一過性脳虚血発作(TIA)」といいます。症状は短ければ数分、長くても24時間以内に消失するため、放置されてしまいがちです。
しかし、これは本格的な脳梗塞を発症する前触れ発作といわれており、海外の研究によると一過性脳虚血発作の発症後90日以内に15~20%、そのうち半数が2日以内に脳梗塞を発症するとされています。
表のような症状が出て短時間で消失したら、一過性脳虚血発作の可能性があります。
しかし、これは本格的な脳梗塞を発症する前触れ発作といわれており、海外の研究によると一過性脳虚血発作の発症後90日以内に15~20%、そのうち半数が2日以内に脳梗塞を発症するとされています。
表のような症状が出て短時間で消失したら、一過性脳虚血発作の可能性があります。

動脈が狭くなり血圧低下などによって血液が十分に運ばれなくなるが、血圧などが元どおりになると血液が流れ出す
一過性脳虚血発作の可能性がある症状

入院しないで治療を受けられるケースも
一過性脳虚血発作と脳動脈瘤は必ずしも入院が必要ではなく、在宅で治療を受けられる場合もあります。一過性脳虚血発作の治療は、脳梗塞への移行を防ぐ薬物療法が基本。脳動脈瘤はリスクが低いと判断された場合、経過観察をし、高血圧などがある人はそちらの治療を行います。一方、脳動脈瘤の治療をする場合は開頭してコブの根元をクリップで留めてそれ以上大きくならないようにする「クリッピング術」や、血管内にカテーテルを入れてコイルでコブを内側から詰める「コイル塞栓術」などが選択肢になります。
疾病ごとの入院割合

出典:厚生労働省「令和2年(2020)患者調査の概況」から計算
検査・治療・お金の話
脳梗塞の治療は時間との勝負
脳梗塞を発症したら一刻も早く治療を始め、血流を再開させることが何より大事です。まずは血栓を除去する治療が行われ、発症から4.5時間以内ならt-PAという薬を使った血栓溶解療法が選択肢で、治療開始が早いほど高い効果が期待できます。4.5時間を過ぎるなどした場合はカテーテルで詰まった血栓を取り除く血栓回収療法が検討されます。
一方、発症から8時間を過ぎている場合は再発予防・脳の保護を目的にした保存療法が選択肢となります。
一方、発症から8時間を過ぎている場合は再発予防・脳の保護を目的にした保存療法が選択肢となります。
脳梗塞の治療の流れ(例)

脳内出血は薬物療法が中心
くも膜下出血は再破裂予防の治療も
脳内出血は血圧を下げたり、出血を止めたりする薬物療法が基本ですが、出血量が多く、命の危険がある場合などは開頭して血腫を取り除く手術が行われる場合もあります。
くも膜下出血は脳のむくみや血圧の上昇を抑える薬物療法と併せて、動脈瘤の再破裂を予防するための治療も行われます。再破裂すると死亡する確率が極めて高くなるためです。治療方法は、「クリッピング術」や、「コイル塞栓術」などが検討されます。
くも膜下出血は脳のむくみや血圧の上昇を抑える薬物療法と併せて、動脈瘤の再破裂を予防するための治療も行われます。再破裂すると死亡する確率が極めて高くなるためです。治療方法は、「クリッピング術」や、「コイル塞栓術」などが検討されます。
長期にわたるリハビリと再発予防
脳血管疾患を発症すると、体の機能に様々な障がいを起こすことが多く、リハビリに時間がかかることなどから入院期間が長くなりがちです。リハビリは退院した後も続ける必要があるほか、再発リスクも高いため、再発予防のための服薬なども続ける必要があります。機能回復と再発予防に長い時間をかけて取り組む覚悟が必要といえるでしょう。
脳血管疾患・心疾患・がん退院患者の平均在院日数の比較

出典:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」
脳血管疾患の治療期間

出典:日本生命調べ 2020年度「インターネットアンケート」の調査結果から計算
脳卒中に備えておきたい金額の目安

出典:【治療費】ニッセイ基礎研究所「2021年度3大疾病への備えと治療の実態に関する調査」
【交通費・外食費用】日本生命調べ 2022年度「インターネットアンケート」の調査結果から計算
*高額療養費制度を利用した場合は利用後の金額
監修:公益財団法人日本生命済生会日本生命病院
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