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第22回 人生100年時代の”働き方・活躍の仕方”

2018年7月2日

人生100年時代の働き方〜「生計就労〜生きがい就労」の実現

 人生100年時代、年齢に関わらず自分らしく社会の中で“活躍”し続けることは、健康や生きがいにもつながる大切なことです。特に「就労」という形で活躍し続けることは、高齢期の経済基盤を支えていくことにもなります。こうした話は、各種メディアの報道からも昨今よく見聞きされていることかもしれません。ただ、いざ自分が高齢期に活躍し続ける、働き続けることに対して、具体的な考えやイメージをもたれているでしょうか。今回は、“高齢期に働く”ことに注目しまして、筆者の考えであったり、社会の変化の情報をお届けしたいと思います。なお、この話の前提としては、「定年」がある仕事をされている人を念頭においている点、あらかじめご了承ください。

 まず、高齢期に働く、つまり定年を迎えた後にさらに働き続けることについて、皆様はどのように考えられるでしょうか。「それまで十分勤め上げたのだから、あとはゆっくりできることが望ましい」、「いわゆる高齢者になったのだから引退はやむを得ない」など、引退することを歓迎、あるいは必然のこととして受け入れる考えもあるかと思います。ここは経済環境の違いも含めて、考え方も人それぞれだと思いますが、一つ明らかなことは、人生100年時代に照らせば、60歳あるいは65歳で引退した後、「30年、40年という人生がまだ残っている」ということです。人生の長さに照らせば、60歳あるいは65歳での引退は明らかに“早すぎる”と思います。「定年=引退」という人生のイベントはあくまで「通過点」と考えることが自然ではないでしょうか。
 第7回のコラムでもお伝えしたように、今の高齢者は若返っています。その下の年代の人たちもおそらく同様でしょう。日本老年学会等が提唱しているように65〜74歳まではいわゆる高齢者ではなく「准高齢者」として扱うことが社会的にも相応しいと考えます。つまり、個人差のある話でありますが、一つの目途として74歳までは体力的にも十分活躍し続けられると、そうした“次なる活躍の可能性がある”と私たち一人ひとりが自覚することが必要であり大切なことだと考えます。“もう歳だから”ということを口にする人は少なくありませんが、その時期は少なくとも75歳を過ぎてからにすべきでしょう。
 そうした考えの中、人生100年時代に相応しい働き方を考えますと、私は次のようなパターンが理想と考えています。それは、「65歳までは生計のための就労(=「生計就労」)に勤め、その後は“85歳くらい”まで生きがいのための就労(=「生きがい就労」)に従事する」ということです。75歳では足らず、85歳までと考えています。これはあくまで筆者の私見です。ここで理解いただきたいことは、65歳からの生きがい就労は、現役当初と同じような働き方ではなく、週2-3日、1日2-3時間くらいの軽度な仕事です。第11回のコラムの中でもご紹介したように、高齢者の多くは、現役当初と同じような月曜日から金曜日までフルタイムで働くことを望んでいません。自分の体力やペースに合わせて働けることを望む人が多いのが実態です。「仕事=苦役」と考える人も少なくないかもしれませんが、それくらいの負荷で自分のペースで高齢期も働けることはむしろ恵まれた環境ではないでしょうか。このように「生計就労」から、働き方をダウンサイジングした「生きがい就労」に移りながら、例えば一つの目標として、85歳くらいまで活躍できる人生ができたら、それは素晴らしいと思われないでしょうか。経済的な支えという視点からも、年金に加えた就労収入が得られるわけで、今後の世代にとっては見過ごせないことだと考えます。
 なお、そうした働き方は選択肢(可能性)としても非常に多いのです。雇用されて働くパターン(継続雇用、再雇用、再就職)から、自らから「起業」する、NPOなど地域貢献型の活動をする、協同労働やボランティアという活躍の仕方まで様々多様にあります。人生は1回きりです、65歳からもこうした様々な働き方、活躍の仕方がある、自分のキャリア・人生を拡げることができる可能性があることをぜひ認識いただきたいと思います。

図表1:人生100年時代の理想の働き方イメージ

資料:筆者作成

高齢者の活躍の場を拡げる「生涯現役促進地域連携事業」の展開

 とはいえ、そうしたリタイアした後も活躍できる“場”がなければ、生きがい就労など“絵餅の話”ではないか、と思われた人も少なくないと思います。この点については、そうした場を創ろうとしている事業が全国各地で、現在進行形で進められています。それは、厚生労働省が2016年度から進めている「生涯現役促地域連携事業」というものです。これからの皆様のセカンドキャリアの実現にも関係する可能性がありますので、ぜひ注目していただきたいと思います。
 この事業は、地方自治体(都道府県/市区町村)が中心となって、まず所定の「地域高年齢者就業機会確保計画」を策定し、そのうえで地域の関係機関(自治体をはじめ高齢者の就業などに関係する機関)で組織する「協議会」等が、高齢者の活躍場所を拡げるための様々な活動を行っていくものです。2016年4月に創設されてから2年が経過した現在(2018年6月)、全国で次の42の地域(都道府県21、市区町村21)で進められています。なお、当事業は厚生労働省からの公募(継続的に実施される)に対して、各地方自治体が名乗りを上げ採択された場合に実施できる事業となっています。現時点ではまだ僅かですが、この事業は今後全国各地に拡がっていくでしょう。当事業はあくまで「地域が抱える課題の解決に、高齢者の力を活かしていく」ことを志向している事業です。その意味をイメージしたものが図表3になります。

図表2:厚生労働省「生涯現役促進地域連携事業」展開地域(2018年6月現在)

資料:筆者作成

図表3:生涯現役促進地域連携事業のイメージ

資料:筆者作成

 このように人生100年時代、年齢に関わらず活躍できる社会及び人生の実現に向けて、社会は変化しつつあります。高齢期に働くことへの考えは人それぞれとは思いますが、大事なことは、何歳になっても社会とつながりあっていることだと思います。その手段として高齢期にもマイペースで働ける場があることは理想ではないでしょうか。人生100年、「働く」ではなく、“いつまでも「活躍」し続ける”社会の実現に、筆者も今後取り組んでいきたいと思いますし、そのことに一人でも多くの皆様が賛同されることを期待します。

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)