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3分でわかる 大人のための長生き応援コラム

第13回 高齢期の楽しみ方1

2017年10月6日

高齢者は普段何をして楽しんでいるのか?

 第12回では、心を元気にする楽しみ、生きがいを見つけることが、健康で長生きするための一つの方策となりうる話をご紹介しました。何を楽しみと感じるかは人それぞれではありますが、具体的にはどのようなことが挙げられるでしょうか。今回は、高齢期における楽しみの“中身”に注目します。

 内閣府の調査(2014年)で、60歳以上の人(3893人)に、「普段の生活で何を楽しみにしているか」を尋ねた調査結果を見ますと(図表1)、最も多かったのは「テレビを見る・ラジオを聞く」ということでした。男女合わせて83.2%の人が楽しみと回答しています。次いで、「新聞、雑誌を読む」(55.0%)、「仲間と集まったり、おしゃべりをすることや親しい友人、同じ趣味の人と交際する」(47.7%)、「食事、飲食する」(47.5%)、「旅行」(41.2%)「家族との団らん、孫と遊ぶ」(40.1%)、「買物、ウィンドウショッピング」(31.3%)と続きます。回答する選択肢が限られた中での調査結果ではありますが、楽しみと感じることが人によって様々であると確認できます。ただ、次の2点が気にかかります。

 1点目は、「各々の人が有する楽しみの数は、あまり多くない」と見受けられる点です。当調査は複数回答が可能であるため、それぞれの選択肢に対して楽しみと回答する割合が高く出ても不思議ではないのですが、3割を越えているのは前述の7つだけです。「楽しみは1つあれば良い」、また、「テレビを見て、人と交流して、食事を楽しむことが自身にとっての楽しみである」という考え方も理解できますが、それ以上に、人生を豊かにする上では、楽しみは多いに越したことはないのではないでしょうか。

 2点目は、「多趣味である人は、あまり多くない」と見受けられる点です。選択肢にあるもののうち、趣味に関するものは「主に屋外で行う趣味活動」「主に室内で行う趣味活動」となっており、それぞれの回答は19.9%と14.3%に止まっています。例えば、「テレビを見る」等の選択肢を趣味として捉えた結果、このような割合になっている可能性はあるものの、「園芸」「写真」「絵画」「音楽活動」など、屋外・室内問わず趣味となりうるものは様々挙げられる中で、「主に屋外で行う趣味活動」「主に室内で行う趣味活動」に対する回答は2割以下に止まっています。以上を踏まえると、「趣味に勤しんでいる人はあまり多くないのかもしれない」と思われます。

人生100年時代は多くの時間があり、たくさんの楽しみを経験できる

図表1:普段の楽しみ(60歳以上の人の回答、n=3893、複数回答)

  • 上記の数値は「合計」の値
    • 資料:内閣府「平成26年度 高齢者の日常生活に関する意識調査結果」

 なぜ、こうした点に注目したかといえば、“人生100年時代は、多くの時間があり、新たなチャレンジを通じ、たくさんの楽しみを経験できる”と考えるからです。「テレビを見る」「人と交流する」「食事を楽しむ」といった生活の継続に留まらず、「新たなチャレンジを通じ楽しみを見つける」ことで、人生をより充実したものにできるのではないでしょうか。例えば、リタイアした後、芸術に目覚め画家を目指す、音楽に励み演奏会を開く、外国語を話せるようになるなど「新しい自分づくり」につながるようなことだったり、農業を始めて自給自足の生活を目指すといった「新しい生活環境」を創ることなどが挙げられます。人生100年時代という長い期間においては、新しい自分、新しい生活を創造できる多くのチャンスがあるということを念頭におきながら、新たなチャレンジを通じてたくさんの楽しみを積極的に開拓していただきたいと思います。

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)