1. 日本生命保険トップ
  2. 知る・楽しむ
  3. 大人のための長生き応援コラム
  4. 第9回 加齢とともに幸福感はどうなるか

3分でわかる 大人のための長生き応援コラム

第9回 加齢とともに幸福感はどうなるか

2017年6月5日

生活満足度は加齢とともに上昇

 何歳になっても常に幸せを感じながら過ごしたいものです。しかし、年は重ねたくない、長生きするのは不安だと考える人も少なくありません。実際、高齢者はどのように感じているのでしょうか。今回からは高齢期の“幸せ”をテーマに、知っていただきたい研究成果等をご紹介していきます。

 内閣府が行った「国民生活に関する世論調査(平成26年)」で「現在の生活に対する満足度」を聞いた結果をみると、50歳以上では高齢な人ほど満足度が高い人が多くなっています(図表1)。「満足」または「まあ満足」と答えた人の合計ですが、男女ともに、50歳代よりも60歳代、さらに70歳以上の人のほうが「満足」「まあ満足」と感じている人が多くなっているのです。仕事や子育てなどの責任から解放され、多くの自由な時間を手にできたことだったり、不安を抱いていた高齢期の生活を無事におくれていることの安心感が満足につながっていると考えられ、実際の高齢者の多くが現在の生活に満足している様子がうかがえます。

図表1 現在の生活に対する満足度

出典:国民生活に関する世論調査結果(内閣府・平成26年)より

70歳以降も精神的健康状態は上昇

 しかし、70歳代を過ぎた後はどうなのでしょうか。上記の調査結果は70歳以上の人を一括りで集計しているため、80歳代、90歳代に限ってみることができません。そこで、70〜90歳代の方を対象に調査した次の研究結果からその状況を確認してみます(図表2)。

 ここでは、身体的な健康状態と精神的な健康状態について、80歳を基準にその前後を比較しています。結論としては、身体的な健康状態は、高齢になるほど低下していきますが、精神的な健康状態は逆に高まっていくようです。特に高齢になるほど“前向きな感情が高まる”傾向が示唆されています。確かに、心理学の中で、高齢になるほど“ネガティブな感情を最小にして、ポジティブな感情を最大にする”心理的適応が行われることが様々な研究から明らかにされています。これは、社会情緒的選択理論(情緒的調整)と呼ばれていることです。前向きに人生を謳歌していくための高齢者の“知恵”と言えるかもしれません。“嫌なことよりも、楽しみを考えること”は、日々の生活をより前向きに充実させるためにも必要であり、高齢者に限らず全世代が意識して心がけていくと良いかもしれません。

図表2 年齢と健康状態の関係のイメージ(80歳を基準とした場合)

  • 出典:権藤泰之「学際研究による老年社会科学からの健康長寿へのアプローチ」(日本老年医学会雑誌,51巻1号,2014.1,p35-38)より/70〜90歳代・約2300名を対象とした分析結果(会場招待型の検診調査結果)

 以上から述べたいのは、実際の高齢者の意識(満足度等)も知った上で、“高齢期を明るく展望して欲しい”ということです。年を重ねることに不安を持たれている人は少なくありませんが、実際、多くの高齢者が満足度高く暮らしています。もちろん楽観的に言えることではありませんが、こうした事実も踏まえながら、一人ひとりが「高齢期の生活を満足」と答えられるようにしていくことが大切です。人生100年時代、“加齢に前向きな人生”にしていくことが、いまを生きる私たちに課せられた課題でありチャレンジです。

(ニッセイ基礎研究所 前田 展弘)

筆者紹介

前田 展弘(まえだ のぶひろ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員
研究・専門分野:ジェロントロジー(高齢社会総合研究)