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役立つ医療情報 メディカルレポート

Vol.4 ウィルス性慢性肝炎 〜怖がらず、あせらず、侮らず〜

肝臓の障害で全身倦怠感・食思不振などの症状が発生

慢性肝炎とは、6カ月以上の肝機能異常、特に肝障害を表すAST、ALT値の上昇とウイルス感染が持続している状態をいいます。我が国では、慢性肝炎のほとんどがB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスが原因であり、C型慢性肝炎が約70%を占めます。ウィルス性肝炎で肝臓が傷つく主な原因は、ウイルスそのものによるのではなく、ウイルスを排除するために働く宿主の免疫応答であると考えられています。慢性肝炎では自覚症状に乏しく、健康診断で発見されることも多いのです。肝臓が「沈黙の臓器」と言われる所以です。肝臓に障害が発生すると、時に全身倦怠感、食思不振、上腹部違和感、腹部膨満感、悪心などの症状を訴える場合があります。

ウイルス性肝炎は血液検査で診断します。血液中にHBs抗原が検出されれば、B型肝炎ウイルスに感染しています。最近では、B型肝炎ウイルス量の測定が可能となり、予後および治療法の選択のため重要となっています。C型肝炎の診断には血液中のC型肝炎ウィルス抗体を検査します。C型肝炎ウィルス抗体が陽性であればC型肝炎ウイルスに感染していると思われます。しかし、一旦過去に感染し既に治癒している人ではC型肝炎ウィルス抗体が残っていることもあります。確実な診断のためにはウイルスそのものであるC型肝炎ウィルスRNAを検査することが必要です。C型肝炎ウィルスRNAが陽性であればC型肝炎ウイルスに感染しています。

1. B型慢性肝炎

血液などの体液を介して感染

我が国におけるB型肝炎ウイルス感染者は人口の1%強、約150万人と考えられていますが、症状が表れず医療機関を受診しない無症候性キャリアの方も多く、正確な感染者数は不明です。B型肝炎ウイルスは非常に感染力が強く、血液などの体液を介して感染します。日本のB型慢性肝炎の大部分は母児間の感染によりますが、最近は海外からの感染による症例が増えてきています。母児感染は免疫機構の未熟な幼小児期に感染することにより成立します。一般的には、思春期から成人になると、免疫応答が活発となりB型肝炎ウィルスを排除しようとしてB型肝炎ウイルス感染肝細胞が破壊され、慢性肝炎が発症します。その後ウイルス量が減少して肝炎が沈静化し、HBs抗体が出現すれば治癒に至ります。しかし、HBs抗体が出現する頻度は高くなく、長期間を要します。肝臓での炎症の程度がひどいと多くの場合、肝硬変に進行し、また血中のウイルス量が多いと肝癌の発生率が上昇することも解ってきました。最近では、HBs抗原量が多いと肝癌の発生率が上昇すると言われています。そこで、B型肝炎ウイルス量を減少させる内服薬(抗ウイルス剤)が使われます。抗ウイルス剤が使用可能となり、1日1回の内服で肝炎の鎮静化、ウイルス量の減少が可能となっています。更に、肝癌の発生も抑制されることが示されています。35歳以下の方ではインターフェロン(IFN)治療も有効ですが、血中ウイルス量、肝機能などから治療方法が選択されます。ALT正常のHBVキャリアでも、血中ウイルス量が高値であれば治療した方が良いと言われています。

B型肝炎の感染予防として、ワクチンが使用可能

日生病院 全身用320列CT

成人期以降の初感染は針刺し事故、血液汚染、性行為等の水平感染によります。一般的には、成人が感染すると、4-24週間の潜伏期を経て急性肝炎を発症し、多くの場合一過性で、慢性化することは稀です。しかし、近年慢性化率が上昇しており、欧米型(ジェノタイプA型)のB型肝炎ウイルス感染では高い確率(約10%)で慢性化することが解ってきました。他に免疫抑制剤やステロイドの使用、HIV感染等免疫反応が低下している状態で感染すると慢性化することがありますので注意が必要です。また、B型急性肝炎の約2%の症例で重篤な症状が発生する劇症肝炎となると言われています。

B型肝炎の感染予防として、ワクチンが使用可能ですので、感染するリスクの高い方はワクチン接種をお勧めします。B型肝炎ウイルスキャリアの母親には、ワクチンと抗HBs免疫グロブリン投与により子どもへの母児感染の大部分が予防可能となっています。
また、平成28年10月1日より、平成28年4月1日以降に生まれた0歳児に対してB型肝炎ワクチンの定期接種が制度化されました。

感染経路の約半数が輸血

我が国におけるC型肝炎ウイルス感染者は日本の人口の約2%、200万人程度と考えられています。C型肝炎ウイルスは体液、主して血液を介して感染します。感染経路は約半数が輸血であり、他に注射などの医療行為、覚せい剤注射、刺青、針刺し事故、性行為などです。C型肝炎ウイルスは肝細胞内に侵入して、肝細胞内で増殖します。宿主がC型肝炎ウイルスに感染した肝細胞を排除しようとして肝炎が生じます。

C型肝炎ウイルスに感染すると急性肝炎を発症します。一般に、C型急性肝炎では自覚症状は軽いですが、時に重症化、劇症化することがあります。C型肝炎ウイルスに感染すると、約1/3は自然に治癒しますが、高率に持続感染状態となり約70%は慢性肝炎に移行します。一旦慢性肝炎に移行すると自然治癒することは非常に稀であり、長期間にわたって炎症が持続し、肝臓が硬くなる線維化が緩徐にかつ確実に進行して肝硬変に至ります。一般的に、C型慢性肝炎では線維化は約10年毎に1段階ずつ進行するとされています。血小板数は肝臓の線維化をよく反映し、10万以下では肝硬変への進行が疑われます。また、炎症、線維化の進行に伴い肝細胞癌の発生率が高くなり、慢性肝炎の進行例では年率約3%、肝硬変に至れば約7%に達します。

怖がらずに肝臓専門医を受診しましょう

今まではインターフェロンという注射薬による治療が基本でしたが、2011年よりC型肝炎ウイルスに直接作用する経口薬剤(DAA)が開発され、2014年よりインターフェロンを使用しないDAA経口剤2剤による治療が可能となりました。当初は24週間の治療期間で90%以上の治癒率でしたが、その後新しいDAAがいくつか開発され、現在ではより短期間の12週間の治療にてより高率に治癒が可能となっています。ウイルスのタイプの違いや耐性変異の有無、併用薬の注意点、腎障害等の合併症の有無により使用薬剤が異なりますが、95%以上の患者さんが治癒できています。今までより安全かつ高率にC型肝炎が治る時代になっていますので、心当りのある方は怖がらずに肝臓専門医を受診するようにしましょう。

執筆者

中村秀次(なかむら ひでじ)

公益財団法人日本生命済生会付属日生病院
ニッセイ予防医学センター長
日本消化器病学会認定専門医・指導医
日本消化器病学会評議員
日本肝臓学会認定肝臓専門医・指導医
日本肝臓学会評議員
日本消化器内視鏡学会認定専門医・指導医