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役立つ医療情報 メディカルレポート

Vol.2 「糖尿病〜放置すると怖い病気、しかし早期治療で合併症を抑止〜」 No.2

糖尿病の診断方法

病名の由来から、尿糖(尿中のブドウ糖)をチェックすれば糖尿病の診断ができると思われるかもしれません。しかし、糖尿病であっても尿糖が出ていない場合もあるため、尿検査では糖尿病かどうかを診断することはできません。糖尿病の診断のためには血糖値の測定が必要です。ただし、血糖値は食事の影響を受けるため採血の条件によって糖尿病の判定の基準は異なります。

糖尿病の診断

表の@〜Bは血糖値のデータであり、CのHbA1c(hemoglobin A1c、グリコヘモグロビン)は採血時からさかのぼって1〜2カ月間の平均血糖値を反映する検査です。別の日に行った検査で@〜Cのいずれかが再確認できれば糖尿病と診断されます。ただし、初回の検査と再検査の少なくとも一方で、必ず@〜Bのいずれかを満たしていることが必要であり、Cだけでは糖尿病と診断することはできません。@〜BのいずれかとCが確認された場合には、初回の検査だけでも糖尿病と診断することができます。

空腹時血糖値が110mg/dl未満で、75gブドウ糖負荷試験の2時間血糖値が140mg/dl未満である場合は正常型と判定されます。正常型でもなく糖尿病でもない場合は「境界型」と判定されます。境界型は糖尿病の予備軍であるだけでなく、動脈硬化を促進しやすい状態でもあります。境界型と判定された場合は、3〜6カ月に1回程度の間隔で病気の進行をチェックするとともに、動脈硬化性疾患の合併の有無についても検査を受けることが勧められます。

治療法は食事療法・運動療法・薬物療法

糖尿病と診断された場合は、高血糖の状態をできるだけ正常に近づけることを目標とした治療が行われます。糖尿病の治療法には、1)食事療法、2)運動療法、3)薬物療法があります。食事療法はどのタイプの糖尿病であっても治療の基本であり、バランスのとれた食品を適正な量だけ摂取することが勧められています。体重を減らす効果だけでなく、食事を摂取した後の血糖値の上昇を抑えることですい臓のβ細胞からのインスリン分泌の負担を軽減する作用が期待できます。
運動療法には、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動とスクワット、ダンベル体操、腕立て伏せなどのレジスタンス運動があります。筋肉への血糖の取込みを促進し血糖値を下げる効果が認められています。水中ウォーキングは有酸素運動とレジスタンス運動の両者がミックスされた運動で、膝にかかる負担が少ないという長所があります。運動療法を行う場合は、過剰な負荷は避け「楽である」または「ややきつい」と感じる程度の運動を日常生活の中に組入れることがよいでしょう。
血糖値を正常に近づけるための薬物療法(血糖降下薬)には飲み薬と注射薬があります。現在では大別して7種類の飲み薬があり、インスリンの効果を高める薬、インスリン分泌を促進する薬、腸からのブドウ糖の吸収や腎臓からのブドウ糖の排泄を調節する薬などがあります。注射薬療法にはインスリンのほかGLP-1受容体作動薬があり、後者にはすい臓からのインスリン分泌を促進する作用のほか食欲抑制作用や胃運動抑制作用などもあります。これら糖尿病の治療薬は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性(インスリン効果の減弱)の程度など患者の状態に合せて選択されます。薬物療法を受けている場合に注意しなければならない副作用のひとつに低血糖があります。薬物の効果が強すぎた場合に起こるもので、発汗、動悸、手指のふるえなどの症状のほか、重症の場合は意識レベルが低下し昏睡になることもあります。

糖尿病の治療法

糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、脳血管障害、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、糖尿病足病変などの糖尿病の合併症を発症した場合は、これらに対する治療が必要となります。どの合併症も進行すると症状の程度も強くなり、日常生活や生命を脅かすだけでなく医療費も高額になってしまいます。したがって、これら合併症をできるだけ早期に診断しその進行を抑止するための治療も必要です。そのためには、血糖のコントロールだけでなく血圧や血清脂質(コレステロールや中性脂肪など)の管理も重要です。

生涯にわたって上手く付き合う

多くの場合、糖尿病は年齢と共に進行していきます。進行すればするほど血糖値は高くなり、その分だけ糖尿病の合併症の危険度も高まります。現在では、さまざまな種類の糖尿病治療薬が開発され糖尿病合併症の早期診断法も確立されてきています。したがって、糖尿病を恐れることはありません。しかし、自覚症状がないからといって糖尿病を侮ってはいけません。糖尿病はコントロールできる病気ですが完全に治るという病気ではないので、通院や治療は絶対に中断せず、生涯にわたって上手く付き合うことが大切です。

執筆者

笠山 宗正(かさやま そうじ)

公益財団法人日本生命済生会付属日生病院院長
大阪大学医学部附属病院臨床教授
日本糖尿病学会学術評議員
日本糖尿病学会専門医
大阪大学医学部医学科卒業