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役立つ医療情報 メディカルレポート

Vol.1 「糖尿病〜放置すると怖い病気、しかし早期治療で合併症を抑止〜」 No.1

糖尿病:その名の由来

わが国の成人の糖尿病患者数は約950万人と推定されています(平成26年国民健康・栄養調査)。20歳以上の成人のうち糖尿病が強く疑われる者の割合は、男性で15.5%、女性では9.8%で男性の方が多く、40歳以上が全体の90%近くを占めることから、中年以降に発症しやすい病気といえるでしょう。
糖尿病(diabetes mellitus)という病名は「甘い(mellitus)尿が大量に排泄される(diabetes)病気」という観察に由来しています。19世紀初めに糖尿病患者の尿の甘味の成分がブドウ糖であることが確定され、「糖尿病は大量のブドウ糖が尿に失われるため身体が消耗する病気」と考えられるようになりました。しかし、ブドウ糖が尿に排泄される原因が血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が高いことであることがわかってからは、「血糖値が高い状態=高血糖」が糖尿病の特徴と認識されています。

原因はインスリン作用の不足

健常者の血糖値は常に正常範囲(80〜130mg/dl程度)に保たれています。そのために重要な役割をしている物質がすい臓のβ(ベータ)細胞から分泌される「インスリン」というホルモンです。食事を摂取すると、食品に含まれる炭水化物は腸でブドウ糖に分解され血液中に吸収されます。健常者では、食後に血糖値が上昇すると、すい臓からインスリンが速やかに分泌されることにより血糖値は正常範囲まで低下します。糖尿病患者ではインスリンの作用が不足するため血糖値が十分に下がらず高いままになってしまうのです。
インスリン作用の不足は、@β細胞からのインスリン分泌の低下とAインスリン効果の減弱(インスリン抵抗性)のいずれによっても生じます。インスリン分泌の低下やインスリン抵抗性をもたらす原因は単一ではなく、遺伝因子、過食・運動不足・肥満・ストレスなどの環境因子、ウイルス感染、特定の薬剤、すい臓病・肝臓病・内分泌疾患などさまざまです。糖尿病の診断をきっかけにすい臓病や内分泌疾患が発見される場合もあります。

過食・運動不足・肥満・ストレスなども重要な原因

糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。1型糖尿病は多くの場合免疫異常によってすい臓のβ細胞が破壊されインスリン欠乏状態になるタイプで、インスリン注射による治療が不可欠です。子どもや思春期に多く体型とは無関係に発症します。一方、2型糖尿病はわが国で最も多い糖尿病のタイプで、中年以降に診断されることが多く、糖尿病の素因(遺伝的因子)がある人に過食・運動不足・肥満・ストレスなどの生活環境の要因が加わることで発症すると考えられています。2型糖尿病患者のインスリン分泌低下やインスリン抵抗性の程度は患者によって異なるため、糖尿病の治療法は必ずしも一様でなく、食事療法、運動療法、飲み薬、注射薬の中から適した治療法が選ばれます。1型糖尿病、2型糖尿病のほか、別の病気や薬剤が原因で発症する糖尿病や妊娠時に診断される糖尿病などもあります。

早期からの適切な治療で合併症を防ぐことが可能

中等度以上の高血糖の場合(たとえば250mg/dl程度まで)は、のどの渇き、尿量の増加、体重減少、疲労感などの症状がみられます。血糖値がさらに上昇すると、高度の脱水をおこし昏睡になることもあります。一方、血糖値がそれほど高くない場合は自覚症状はほとんどありません。しかし、糖尿病状態が長期間続くと全身にさまざまな病気(慢性合併症)が出現します。糖尿病の慢性合併症には、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害、脳血管障害(脳梗塞など)、冠動脈疾患(心筋梗塞、心不全など)、末梢動脈疾患、糖尿病足病変などがあります。糖尿病患者では認知症や悪性腫瘍を合併する頻度が高いことも報告されています。糖尿病の合併症が進行すると、心筋梗塞や心不全が原因で死亡したり脳梗塞のため麻痺をきたすほか、失明に陥ったり、腎不全のため透析療法や壊疽のため足切断が必要になる場合もあります。

合併症がある程度進行してから糖尿病の治療を開始した場合は、これら合併症の進行を防ぐことはむずかしいとされています。しかし、糖尿病と診断されて早い段階から適切な治療を継続することで、合併症の発症や進行を防ぐことができるのです。

執筆者

笠山 宗正(かさやま そうじ)

公益財団法人日本生命済生会付属日生病院院長
大阪大学医学部附属病院臨床教授
日本糖尿病学会学術評議員
日本糖尿病学会専門医
大阪大学医学部医学科卒業