1. 日本生命保険トップ
  2. 知る・楽しむ
  3. 新社会人のための経済学コラム
  4. 第69回 日本株の3割を外国人投資家が保有?〜相場を左右する外国人投資家〜

3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第69回 日本株の3割を外国人投資家が保有?〜相場を左右する外国人投資家〜

2015年11月1日

アベノミクス相場を牽引した外国人投資家

 第2次安倍政権が誕生するきっかけとなった野田前首相による衆議院解散発表(2012年11月)から、日経平均株価は上昇基調が続き、2015年4月には15年ぶりに20,000円を突破しました。2012年11月頃の日経平均株価は9,000円で推移していましたから、2年半で2倍以上も上昇したことになります。

 株式市場では外国人投資家の影響が大変大きくなってきています。日経平均株価が2倍以上上昇した2年半の期間で、21兆円の現物、先物を買い越し(※1)ました。その結果、外国人投資家の日本株保有比率は2014年度には31.7%と3年連続で過去最高を更新しています(図表1)。1990年度には5%にも満たない存在でしたが、バブル崩壊後、国内の投資家が株を手放す一方で、積極的に日本株に参入してきている様子が伺えます。

図表1 投資部門別株式保有比率の推移

全国4証券取引所上場会社の株式保有金額における割合
(資料) 日本取引所グループ「株式分布状況調査」より作成

 売買代金(※2)のシェアについても、1990年の10%程度から一貫して上昇して1996年にはシェアトップとなり、2014年には63.8%と日々の取引の半分以上を外国人投資家が占めています(図表2)。このように、保有(ストック)と売買(フロー)の両面で存在感を増しており、株価の動向だけでなく、コーポレートガバナンス(※3)の改革も進む中で、企業の経営面にも大きな影響を与えてきています。

図表2 投資部門別売買代金シェアの推移

(注) 銀行は、都銀・地銀等と信託銀行の合計
(資料) 日経NEEDSより作成

外国人投資家が6兆円も日本株を売り越し

 さて、20,000円を突破した日経平均株価の先高感(※4)は依然強く、21,000円目前まで上昇しましたが、今年8月中旬以降はがらっと雰囲気が変わりました。中国の人民元切下げをきっかけに中国の景気減速懸念が一気に高まり、あれよあれよという間に20,000円を割り、9月末には17,000円を割込む場面もありました。短期間で4,000円も大幅下落したことになりますが、やはり、この下落の背景にも外国人投資家の存在があります。

 外国人投資家は今年に入っても順調に日本株を買入れていましたが、中国株の急落等を受けて6月頃から売りが目立つようになりました。特に、8月は2.7兆円、9月は3.4兆円の売り越し(※5)となり、2カ月間で6兆円を超えています。アベノミクス相場が始まって以降、月次で2兆円を超える売り越しは、2014年1月の1回だけでしたから、外国人投資家による今回の売り越しの金額がいかに巨額だったかを物語っています。

 ちなみに売買代金シェアの2番手は2割程度を占める国内の個人投資家です。国内個人投資家の投資スタンスは「逆張り」と呼ばれ、上昇局面で売り越し、下落局面で買い越す傾向があります。外国人投資家が買って株価が上昇する局面で売り、外国人投資家が売って株価が下落する局面で買うという投資判断を行っていることが、図表3からよく分かります。その結果、アベノミクスによる上昇相場において国内個人投資家は利益確定(※6)を進め、保有比率は低下しています。

図表3 国内個人投資家・外国人投資家の売買動向と日経平均株価

(注) 現物・先物を含む
(資料) 日本取引所グループ「投資部門別売買状況」、「投資部門別取引状況」および日経NEEDSより作成

外国人投資家は再び戻ってくるか

 足元の相場は落ち着きも見られ、10月初時点において18,000円台前半で推移しています。外国人投資家と一口に言っても短期的に売買して利ざや(※7)を稼ぐヘッジファンドや長期保有を目的とした年金基金などさまざまな投資家が存在していますが、日本株が再び20,000円を突破するには、外国人投資家が日本株に戻ってくる必要があります。

 今年10月に第3次安倍政権が発足して政策の軸足を再び経済最優先に移すと強調しています。足元の景気は、企業の設備投資に対する消極的な姿勢や賃金の伸び悩み、消費回復の遅れなど弱さが見られます。また、デフレ脱却や少子高齢化、財政再建といった構造問題など課題は山積みです。政策に対するプラスの評価を与え、外国人投資家の関心を再び日本に向けられるか注目です。

(※1) 買い越し:個人投資家などが一定期間内に行った株式・先物取引において、売り取引よりも買い取引を多く行った状態のこと。
(※2) 売買代金:株式市場で売買が成立した金額。
(※3) 企業統治と訳され、不正や不祥事を防ぎ、企業価値の向上が行われているか監視する仕組み。
(※4) 先高観:相場の先行きが高いと予想すること。
(※5) 売り越し:個人投資家などが一定期間内に行った株式・先物取引において、買い取引よりも売り取引を多く行った状態のこと。
(※6) 利益確定:持っている株式を売って、利益を確定させること。
(※7) 利ざや:売買によって得られる差額の利益金。

(ニッセイ基礎研究所 白波P 康雄)

筆者紹介

白波P 康雄(しらはせ やすお)

株式会社ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員。
研究・専門分野:日本経済