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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第62回 振り込め詐欺の被害額は過去最高の376億円!〜平成26年は架空請求詐欺が急増〜

2015年4月1日

 今日は4月1日。エイプリールフールの日です。そこで今回は、「嘘」にちなんで、今なお横行している「振り込め詐欺」のうち、被害が多い「オレオレ詐欺」と「架空請求詐欺」についてご紹介したいと思います。

今なお、オレオレ詐欺や架空請求詐欺の被害は増加

 「振り込め詐欺」の被害総額は平成26年には376億円と、統計をとりはじめた平成16年以降、最悪となりました。その中でも、「オレオレ詐欺」と「架空請求詐欺」は被害が多いものとして知られています。

 警察白書によると、「オレオレ詐欺」とは、親族を装うなどして電話をかけ、会社における横領金の補填金等のさまざまな名目で現金が至急必要であるかのように信じ込ませ、動転した被害者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺(※1)です。親や祖父母の「子どもや孫のトラブルをなんとかしてあげたい。」「内緒にしておいてあげたい。」「早く対処してあげたい。」という心理をついたもので、警察庁ホームページによれば被害者のほとんどが60歳以上の方となっています。

 また、「架空請求詐欺」とは、架空の事実を口実に金品を請求する文書を送付して、指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどの手口による詐欺(※1)です。「オレオレ詐欺」に比べて、若い方でも被害にあっています。

 「振り込め詐欺」の中でもっとも被害が多いのは「オレオレ詐欺」で、平成26年には、被害件数(認知件数)が5,559件、被害総額は175億円にのぼりました。被害の推移を見たいと思います。

 まず、被害件数の推移をみると、平成20年に警察庁に振り込め詐欺対策室が設置され、取締活動の強化、ATM利用限度額の引下げの促進、金融機関職員等による顧客への声掛け等の官民一体となった予防活動が行われたことにより、平成21年に一時減少しました。しかし、それ以降は、被害件数がゆっくりと増加していることがわかります。

図表1 振り込め詐欺の被害件数

(注1) 平成26年の数値は暫定値。
(資料) 警察庁ホームページ

 次に、被害総額の推移をみると、平成21年以降、「オレオレ詐欺」も「架空請求詐欺」も被害総額は増加し続けています。特に平成26年には「架空請求詐欺」の被害額(※2)が172億円と急増しており、「オレオレ詐欺」と並ぶほどになりました。
被害件数と比べて被害総額の増加が大きいことから1件あたりの被害額が増加していることがわかります。

図表2 振り込め詐欺の被害総額の推移

(注1) 平成26年の数値は暫定値。
(注2) 平成25年以降の被害総額は、事後ATM引出額を含む。
(資料) 警察庁ホームページ

 こういった「振り込め詐欺」については、警察をはじめ、金融機関や国民生活センター等の諸団体から注意を呼びかけているにも係らず、被害は今なお減っていません。それだけ詐欺の手口や受取方法が巧妙になってきているということでしょう。被害金の受け渡し方法も、最近ではこれまでのような「振込型」ではなく、現金を自宅等まで取りにくる「現金受取型」や宅配便などを利用する「現金送付型」が増えている(※3)など変化をしています。

オレオレ詐欺、架空請求詐欺の被害にあわないために

 新年度が始まり、進学、就職など新しい生活をスタートさせる方も多いのではないでしょうか。引越しをしたり、携帯電話の番号を変える方や、新たなサイトを利用するようになったり、手続きが増える方もいるかもしれません。

 この2年間で急増している「架空請求詐欺」は、若い方も被害にあっています。改めて、信頼できるサイトを利用することや、何かに自分の情報を登録する際には利用規定をよく読むことはもちろん、自分が利用しているサービスやサイトを常に把握しておきましょう。何かおかしいと感じたら、家族や専門家に相談することが大切です。

 一方、「オレオレ詐欺」は、被害者の多くが高齢の方です。警察庁では防止や被害を最小限にとどめるために、別居している両親や身内の方と近況について話をすることのほか、合言葉を決めたり、ATM利用限度額を引き下げることを勧めています。

 被害者の多くが高齢の方ですから、若い皆さんには関係ない・・・と思われるかもしれませんが、皆さんを装った詐欺に身内の方があうこともあり得ます。皆さんが、住所や電話番号が変わったときはもちろん、普段から、どんな人に囲まれて、どんな環境で、どんなふうに暮らしているのか、ご両親や祖父母など身内の方に伝えておくことが大切でしょう。

(※1) 警察白書による説明を引用
(※2) 平成25年以降の被害総額は、事後ATM引出額を含む(架空請求詐欺の場合、事後ATM引出額は、平成25年は約6500万円、平成26年には約1億5000万円)。
(※3) 振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺の被害金を受け渡す方法は、平成25年で「現金受取型」が42.7%と、「振込型」の39.8%を上回っています(警察白書平成26年版)。

(ニッセイ基礎研究所 村松容子)

筆者紹介

村松 容子(むらまつ ようこ)

株式会社ニッセイ基礎研究所、保険研究部 研究員
研究・専門分野:共済計理人・コンサルティング業務、生保市場調査