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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第56回 金融資産を持たない20代は45%!!

2014年10月1日

20代、金融資産を持たない世帯が増加

 金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)平成25年」によれば、20歳代の単身世帯のうち、金融資産を保有している世帯の割合は54.9%、保有していない世帯は45.1%となっています。5年前(2008年)の調査では、保有していない世帯の割合は31.8%だったことからすると、この5年の間に、金融資産を保有していない世帯が10ポイント以上も増加したことになります(※1)。

 金融資産保有世帯の割合を他の年代と比較すると、30歳代で7ポイント減、60歳代で8ポイント減と他の世代でも減少しているものの、20歳代の減少幅が最も大きくなっています。

図表1 金融資産保有世帯の割合

(資料) 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)」より作成
(注) 2013年調査では「金融資産の有無」を尋ねているのに対し、2008年調査では「貯蓄の有無」として尋ねており、訊き方が異なる点には注意を要する。

20代、金融資産を持つ人と持たない人に格差

 金融資産を保有している世帯について、実際の金融資産額をたずねた質問では、全体では「100万円未満」が18.9%で最も多く、「3000万円以上」(12.5%)、「100〜200万円未満」(11.9%)の順で続いています。その結果、平均では1,274万円、金融資産額を大きさの順に並べたとき、ちょうど中央に位置する中央値では500万円となっています。

 5年前との比較では、「100万円未満」が7.3ポイント減、「100〜200万円未満」が3.5ポイント減と金額帯が低い階級で減少し、「3000万円以上」が4.7ポイント増と金額帯が高い階級で増加していることがわかります。

 一方、20歳代に限定してみると、「100万円未満」が41.6%、「100〜200万円未満」が18.2%と、概ね金額帯が高くなるにつれて少なくなっており、平均では335万円、中央値では120万円となっています。

 5年前の調査でも同様に金額帯が高くなるにつれて少なくなっているものの、「100万円未満」が48.6%、「100〜200万円未満」が21.8%と、200万円未満の層で7割を占めていました。その結果、平均では177万円、中央値では100万円と、金融資産保有世帯では、5年前に比べ、平均では158万円の増加、中央値でも20万円の増加と、むしろ全体に保有額が増えていることがわかります。

図表2 金融資産の分布(金融資産保有世帯)

(資料) 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)」より作成

 これらの結果は、20歳代の単身世帯においても、金融資産の形成が進んでいる者と金融資産を持たない者との格差が生じており、5年前に比べ格差が拡大している可能性があることを示しているといえます。このような格差の発生や拡大の背景には、雇用の状態などからくる所得格差の存在があることは想像に難くありませんが、一方で、資産形成を進めていくためには、計画性をもつこともまた、肝要であるように思われます。

金融資産を保有しない世帯は生活設計を立てている割合が低い?

 そこで、将来のことを考えて生活設計を立てている割合をみると、20歳代では26.1%と全体(28.6%)との差はほとんどみられません。しかし、金融資産保有額別にみると金融資産を保有していない世帯では生活設計を立てている割合は14.1%に過ぎず、1,000万円以上の層では5割前後が生活設計を立てているのに対し、極めて低くなっています。

図表3 生活設計を立てている割合

(資料) 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(単身世帯調査)」より作成

 これらの結果は、限られた所得の中でも円滑に資産形成を進めていくうえで、将来に向けて生活設計を立てることの重要性を示しているといえるでしょう。

 変化の激しい現代において数十年先まで見通すような計画を立てることは難しく、また、数年後には自身をとりまく環境が変わり、目標とするところが変わることもあるでしょう。その時は改めて計画を見なおすことにして、まずは現時点で集められる情報を駆使し、将来の計画を立ててみてはいかがでしょうか。

(※1) 2009年以降の調査では「金融資産の有無」として尋ねているが、2009年調査における金融資産を保有している単身世帯の割合は、全体が70.1%、20歳代が68.9%であり、2010年調査では、全体、20歳代ともに66.2%、2011年調査では全体が61.3%、20歳代が55.7%と、20歳代では特に2010年から2011年にかけて金融資産保有世帯の減少幅が大きくなっている。

(ニッセイ基礎研究所 井上 智紀)

筆者紹介

井上 智紀(いのうえ ともき)

株式会社ニッセイ基礎研究所、生活研究部 准主任研究員
研究・専門分野:消費者行動、金融マーケティング、ダイレクトマーケティング、
少子高齢社会、社会保障

少子高齢化の進展や人口減少といったわが国全体での大きな環境変化は、企業や行政などの取組みや、社会保障などの制度の変化を通じて私たちの生活にも様々な形で影響を及ぼしています。一方で、情報技術の進展とともに日々、膨大かつ多様な情報が私たちの生活を取り巻くようになったために、却って生活者は、本当に必要と感じる情報にしか関心を払うことはなく、自身の関心や興味に従って瞬時に情報を取捨選択するようになっています。
企業や行政が、このような社会環境変化に適応し、生活者との関係を構築・維持していくためには、どのように取組んでいくべきかについて、生活者の視点を意識した研究を心がけています。