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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第53回 東京オリンピックまでに耐震化率95%を達成できるか!?

2014年7月1日

耐震基準に満たない住宅の数

 住宅の耐震化率とは、全住宅に占める耐震基準を満たした住宅の割合のことです。つまり、大地震でも倒壊や崩壊する可能性が低い住宅がどの程度あるのかを示した指標です。全国における耐震化率は、2008年時点で約79%(※1)、おおよそ8割の住宅は大地震でも倒壊等の心配が低いと言えます。

 しかし、裏返すと耐震基準を満たしていない住宅がおおよそ2割程あることになります。2割というと少ないように感じるかもしれませんが、戸数にすると1,050万戸に及びます。
現在の耐震基準は1981年に導入されました。したがって、それ以前に建築された住宅で、その後耐震基準を満たす改修工事を行っていない住宅がこれに該当します。

図表1 耐震化率の現在と目標

(資料) 国土交通省「住宅の耐震化率の進捗状況」より

地震で建物が倒壊すると

 1995年の阪神・淡路大震災では、住宅の倒壊や家具類の転倒によって多くの犠牲者がでました。そしてその被害は、1981年以前の住宅に集中していたのです。また、住宅の倒壊は、直接的に居住者の生命や財産を奪うばかりでなく、周囲の住宅にも被害を及ぼし、道路を塞ぐことで、救助活動や消火活動を妨げることにつながります。さらには住宅を奪われた避難者の増加を招き、それだけ復旧・復興に時間が掛かることになります。私たちは、このような現状を目の当たりにして、地震による被害が大きいと、個人の財産である住宅が社会に大きなマイナスの影響を与える存在であることに気づかされたのです。

耐震化率の目標と耐震化を促進するための支援策

 こうした認識から国は、同年に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」(耐震改修促進法)を制定しました。2006年には、この法律に基づいて策定した基本方針の中で、住宅の耐震化をいっそう進めるために、2015年に耐震化率を少なくとも9割にするという目標を定めました。さらに現在は、2020年までに耐震化率を95%まで高めようとする目標を掲げています。

 耐震化の方法は、耐震改修工事を行うか、建て替えるかということになります。耐震改修工事の方が、費用が少なくて済みますが、どの程度の工事が必要であるか、事前に耐震診断を行って判断します。

 国はこれまでに、耐震診断、耐震改修にかかった費用の一部を補助する制度や、耐震改修を行った家屋の固定資産税を一定期間減額する制度、耐震改修工事に必要な資金を融資する制度などを設けて、耐震改修を促進してきました。

自治体の取り組み

 次に、地域を見てみると、現状の耐震化率や予想される地震による被害想定規模は一様ではありません。自ずと耐震化の目標やその取り組み方法が異なってきます。こうしたことから、都道府県や市区町村は、同法に基づき、耐震改修促進計画を策定して、独自に設定した耐震化率の目標を定め、目標の実現に向けた独自の取り組みを進めています。

図表2 都道府県別現状の耐震化率

(資料) 2009年時点で公表された各都道府県耐震改修促進計画を基に筆者作成

 例えば、大阪府では、「まちまるごと耐震化支援事業」という制度を設けています。これは、自治会や自主防災組織といった地区単位で、耐震化を進めようとするもので、府に登録した耐震化促進事業者と地区が協力して、耐震診断から耐震改修までを包括的に実施するものです。

 静岡県では、「TOUKAI−0」と銘打った、地震によって倒壊する住宅をゼロにするという、木造住宅の耐震化プロジェクトを進めています。独自に既存木造住宅の耐震改修を促進させるための20項目の提案を掲げ、さまざまな制度を用いて、総合的に耐震化を推進しています。

何より重要な住民の意識

 ここまで、耐震化促進に向けた国と自治体の取り組みを紹介しましたが、何より重要なのは、耐震化に向けた住民の意識と行動です。東日本大震災の経験はそれを高めたはずです。

 国が目標とした2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催される年です。オリンピック・パラリンピックの成功に向けて、国民一人ひとりが気持ちを一つにするように、国、自治体、住民が共に、耐震化率95%の目標に向かって取り組む必要があります。

(※1) 平成20年住宅・土地統計調査に基づく推計値

(ニッセイ基礎研究所 塩澤 誠一郎)

筆者紹介

塩澤 誠一郎(しおざわ せいいちろう )

株式会社ニッセイ基礎研究所、社会研究部、准主任研究員
研究・専門分野:都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

都市には固有性があります。そこには物理的な空間特性ばかりでなく、人々の活動がつくりだした環境やそれらの時間的な積み重ねにより形作られた文化が含まれます。そうしたもの全てが都市の個性をつくり、魅力となります。
少子高齢化や低炭素化など都市政策上の課題や都市づくりの理念は共通でも、都市に固有性がある以上、政策手段の行使や計画立案は一様にはならないはずです。こうした課題意識を念頭に、実際に都市のマスタープランづくりや地域のまちづくりに携わった経験を活かして、プランニングやデザインという視点から都市や街、住まいを捉え、望ましいまちづくり、住まいづくり、施設づくりのあり方を社会に問いかけていきたいと考えています。