1. 日本生命保険トップ
  2. 知る・楽しむ
  3. 新社会人のための経済学コラム
  4. 第52回 50兆、30兆・・・?公的年金の財政をおおまかに理解する!

3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第52回 50兆、30兆・・・?公的年金の財政をおおまかに理解する!

2014年6月1日

公的年金の規模は、年間50兆円

 新社会人の皆さんは、そろそろ給与明細の見方にも慣れてきたころでしょう。学生時代のアルバイトと違って、厚生年金保険料などの社会保険料が給与から引去られていますね。その金額は、人によっては税金より大きいかもしれません。

 皆さんが支払った社会保険料などをもとに、老齢年金、遺族年金、障がい者年金などの公的年金が支給されています。支給されている公的年金の総額は年間約50兆円です(図表1)。この水準は国家予算(※1)と比べても相当の大きさで、さまざまな社会保障の給付(※2)の中で約半分を占めています。収入の内訳を見ると、保険料が約30兆円、国の一般会計などからの資金(国庫負担等)が約11兆円、積立金の運用益が約15兆円となっています。

図表1 公的年金全体の財政状況

(資料) 社会保障審議会年金数理部会「公的年金財政状況報告−平成24年度−」

1人あたりで見ると…

 50兆円といっても実感がわきにくいので、ここでは会社員1人あたりの厚生年金の数字に置き換えて見てみましょう。

 年金の総支給額を会社員1人あたりに換算すると、年間100万円強です(図表2)。これを、会社員1人あたり約70万円の保険料と、国などからのお金(国庫負担等)約23万円と、積立金の運用で上げた利益(運用益)約30万円でまかなっている形です。なお、会社員1人あたり約70万円の保険料のうち、半分の約35万円は個人が負担していますが、残りの半分は会社が負担しています。みなさんの給与明細に載っている保険料は個人分のみです。それと同額を、会社が別途負担しているのです。

 よく「高齢者(引退世代)を若い人たち(現役世代)で支えている」と言われますが、前述のとおり個人が保険料として直接負担しているのは35万円で、残りは会社や国などが負担しているのです。ただ、会社や国などの負担の源泉は現役世代の活動によるものだと考えると、高齢者(引退世代)を若い人たち(現役世代)で支えていると言えます。

図表2 会社員1人あたりで見た厚生年金の財政状況

(資料) 社会保障審議会年金数理部会「公的年金財政状況報告−平成24年度−」

年金財政のバランスは、100年単位で考えられている

 公的年金の1年分の財政状況は上記のとおりですが、年金財政の運営はもっと長期的な視点で行われています。これを、高速道路を運転する時に100メートルほど先を見ながら運転するのに似ている、と言う人もいます。現在の仕組みでは、今後約100年間で収入と支出のバランスがとれるように、今後の年金の水準を決めています(図表3)。
 具体的には、現役世代の負担が重くなりすぎないように、引退世代が受取る年金を減らして、年金財政のバランスを調整することになっています。この年金を減らす仕組みが「マクロ経済スライド」と呼ばれるものです。

 そもそも年金の「スライド」とは、今年の年金額をもとに来年の年金額をいくらにするかを決めることを指します。通常、年金額は物価や賃金の変動に合わせてスライドされます。「マクロ経済スライド」が実施されている間は、物価や賃金の変動分から、保険料を払う人数の減少や寿命の延びの分を差引いて年金額がスライドされます。このため、スライド後は通常よりも年金額が少なくなります。

図表3 公的年金財政の運営イメージ

 なぜこのような仕組みになっているのでしょうか。少子化で保険料を払う人が減ると年金財政の収入が減り、寿命が延びると受給者の増加で年金財政の支出が増えて、年金財政のバランスが悪化します。「マクロ経済スライド」は、このようなバランス悪化の要因を年金額の改定で吸収して、財政バランスの改善につなげようという考え方に基づいています。

 政府は、いつまで削減を続ければ年金財政のバランスがとれるかを、5年ごとに確認しています。この確認は「財政検証」と呼ばれ、今年がちょうどその年に当たっています。夏頃に結果が出る見込みですので、その頃には新聞などでこの言葉を見かけるかもしれません。5年前(2009年)の計算では、2038年度まで削減を続ければ、2105年までの年金財政のバランスがとれるという結果でした。今年の計算結果がどのようになるか、注目してみましょう。

  • (※1)2014年度の一般会計予算は約95兆円、財務省「平成26年度予算政府案」
  • (※2)2011年度で合計約110兆円、国立社会保障・人口問題研究所まとめ

(ニッセイ基礎研究所 中嶋 邦夫)

筆者紹介

中嶋 邦夫(なかしま くにお)

株式会社ニッセイ基礎研究所、主任研究員。
研究・専門分野:公的年金財政、年金制度

公的年金制度にとって、財政の健全性と国民の信頼や納得は車の両輪のようなものだと思います。財政が健全でなければ信頼や納得は得られないでしょうし、信頼や納得を得られなければ財政の健全性は保ちにくくなるでしょう。年金財政は社会の映し絵ですので、状況に合わせて制度の見直しが必要になります。
このような視点から、公的年金財政の分析を通じて健全性を考察するとともに、その仕組みを分かりやすく伝えていきたいと思っています。また、個人の貯蓄投資行動の分析や年金に関する情報提供の分析を通じて、老後に向けた準備について考えていきたいと思っています。