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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第51回 先進国で最も低い水準!?女性管理職の割合は11.1%

2014年5月1日

女性管理職の割合、アメリカやフランスに比べて日本は…?

 最近、女性の労働市場参加が増加し、専門分野で働いている女性の活躍がマスコミ等でよく紹介されています。さらに安倍首相はアベノミクスの3本目の矢である成長戦略の中核として「女性の活躍」を取上げており、今後女性の活躍がさらに期待されているところです。

 アベノミクスの効果なのか、2013年における女性の労働力人口は2,804万人で2012年の2,766万人より38万人も増加しています(※1)。しかしながら働く女性の多くはパートやアルバイト等、非正規職として労働市場に参加しており雇用の質が改善されているとは言えないのが現実です。ちなみに、2014年2月現在の女性非正規労働者の割合は58.1%(男性22.2%)で、前年同月の55.9%(男性21.4%)より2.2ポイントも上昇しています(※2) 。

 では、管理職の中で女性が占める割合はどのぐらいでしょうか。残念ながら、日本の女性管理職比率は、他の先進国に比べてかなり低い状態です。2011年の全就業者に占める女性の比率はアメリカの46.9%、フランスの47.5%に比べ、日本は42.2%とそれほど大きく変わりませんが(※3) 、企業の課長以上や管理的公務員を指す『管理的職業従事者』に占める女性比率は、アメリカ43.1%、フランス39.4%に比べて日本は11.1%とかなり低いことが分かります(図表1)。

図表1 女性管理職比率の国際比較

(資料) 日本:総務省統計局「労働力調査」、その他(独)労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2013」
(注) アメリカ、フランス、スウェーデン、イギリス、ドイツ、イタリアは2011年、日本は2012年の数値

女性管理職が少ない理由

 では、なぜ日本の女性管理職比率は他の先進国に比べて低いのでしょうか。図表2は、女性管理職が少ない(1割未満)あるいは全くいない役職区分が一つでもある企業の人事担当者にその理由を聞いた結果を示しています。この結果を見ると、「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」とする企業が54.2%と最も多く、次いで「将来管理職に就く可能性のある女性はいるが、現在、管理職に就くための在職年数等を満たしている者はいない」(22.2%)、「勤続年数が短く、管理職になるまでに退職する」(19.6%)が上位3位を占めていました。

図表2 女性管理職が少ないあるいは全くいない理由別企業割合(複数回答)

(資料) 厚生労働省(2012)「平成23年度雇用均等基本調査」

 この三つの理由から現在日本では管理職になるための女性人材が十分にいない、そもそも職場に管理職候補の女性が少ないということが考えられます。

 今までの日本はワーク・ライフ・バランスに対する政策や意識が十分ではなく、家事や育児に対する負担は主に女性に偏っていました。例えば、職場の慣行や雰囲気により男性は育児休業を取得することがなかなか難しく、男性の育児休業取得率(2012年度)は、1.89%で女性の83.6%には遠く及ばず、先進諸国の中でも際立って低い状況です(※4) 。結局、女性の多くは結婚や出産を理由に退職や休職せざるを得ない状況になり、勤続年数等の理由により管理職になるための条件を満たしていない女性が増加したと言えます。

 女性の活躍を支援するための政策や予算が十分ではなかったことも女性管理職が少ない理由として挙げられます。例えば、日本の「高齢者関連社会支出」は、全社会支出の 59.2%を占めており、OECD加盟国の平均38.8%を大きく上回っていることに比べて、女性の労働市場への参加や出生率の改善を実現するための「家族関連社会支出」の対GDP比は1.48%で、OECD平均2.7%よりかなり低い状況です(※5) 。したがって、今後女性が労働市場でより活躍できる社会を作るためには偏っている社会支出を見直し、「家族関連社会支出」とのバランスをとる必要があると考えられます。

 最後に、女性管理職比率が低い理由として日本の多くの企業でコース別人事管理制度が実施されていることが挙げられます。コース別人事管理制度とは、基幹的な業務と定型的な業務といった業務内容の違い、転居を伴う転勤の可否や、昇進・昇格の可能性などを組み合わせて、基幹的業務を「総合職」、定型・補助的業務を「一般職」といったように、いくつかのコースを設定し、コースごとに異なる雇用管理を行うものです。女性は、男性に比べて一般職に就くケースが多く、それが女性の昇進を阻む要因として影響を与えたことも否定できないと思います。

今後の女性の活躍に期待

 今まで、日本における女性管理職の現状や女性管理職が少ない理由について説明しましたが、今後、女性管理職の増加は期待できるのでしょうか。私の答えはイエスです。

 最近日本では女性管理職比率は少しずつ増加しており、社会のさまざまな分野で女性が輝き出しています。また、女性管理職に対する企業や従業員の偏見もかなり少なくなってきていることが事実です。そこで、今後は女性を取り巻く労働市場の環境がより改善されることが予想されます。

 政府は2014年度から女性登用の数値目標を達成した企業に対し、新たな助成金を交付する方針を固めており、「働くなでしこ大作戦」と名付け、2020年までに指導的地位に占める女性の比率を30%まで増やすことを目標に掲げる等、女性管理職の育成に積極的な動きを見せています。女性の労働市場と関連したすべての問題が解決されているわけではありませんが、過去に比べると女性がより働きやすい社会になったことは確かです。今後もより女性が活躍できる社会になることを期待します。

  • (※1)総務省統計局「労働力調査」
  • (※2)総務省統計局「労働力調査」
  • (※3)労働政策研究・研修機構(2013)『データブック国際労働比較2013』
  • (※4)厚生労働省「平成24年度雇用均等基本調査:事業所調査」
  • (※5)OECD(2012) Social spending after crisis
    金明中(2012)「女性の活躍のための社会支出の再配分を!
    ― OECDのSocial spending after the crisisを参考に ―」研究員の眼

(ニッセイ基礎研究所 金 明中)

筆者紹介

金 明中(きむ みょんじゅん)

株式会社ニッセイ基礎研究所、研究員。
研究・専門分野:社会保障論、労働経済学、日・韓社会保障政策比較分析

日韓社会保障制度や雇用政策について研究しています。日本や韓国における社会保障制度や雇用政策は類似点が多く、両国の制度を比較分析することから、その国の経済、政治、社会、文化的な特徴などが見られるのはとても興味深いことだと思います。
分析の方法としては、アンケート調査やローデータを用いた実証分析のみならず、文献研究やヒアリング調査も大事にしております。今までは医療、介護、年金、雇用保険、そして労働力の非正規化などが主な研究テーマでしたが、今後は貧困や格差、EITC、成年後見制度、少子高齢化や労働市場政策、教育、ダイバーシティ・マネジメントなどについても関心を持ち研究を進めて行きたいと思います。