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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第48回 全国268万戸の空き家を活用するためには

2014年2月3日

空き家の増加

現存する住宅のうち、実に約13%が空き家です。この中には、別荘などで一時的に住む人がいない住宅や、入居者、購入者を募集している住宅も含まれますが、これを除いても4.7%にあたる268万戸が、何らかの理由で長期不在状態にしていたり、将来的に取り壊す予定の空き家、つまり流通も活用もされていない住宅で、その数は徐々に増えています。

図表1:長期不在等空き家数、空き家率の推移

  • (資料)総務省「平成20年住宅・土地統計調査」

空き家が増加する大きな要因には、世帯数より住宅の数が多いことがあります。今後人口だけでなく、世帯数も減少すると予測される中、さらに住宅が余り、空き家が増加していく可能性があります。

図表2:住宅数と世帯数の推移

  • (資料)総務省「平成20年住宅・土地統計調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)2010(平成22)年〜2035(平成47)年 2013(平成25)年1月推計」

老朽化した空き家が周囲に与える影響

管理が行き届かずに何年も放置され老朽化した空き家が増えると、破損や倒壊で周囲に被害を及ぼす、ごみの不法投棄や放火などの犯罪を誘発する、有害動物を誘引する、景観を阻害して地域のイメージを悪くするなど、さまざまな面で悪影響を及ぼす恐れがあります。実際に近年、こうした苦情が全国の自治体で増えてきました。

そのため、適正に管理されていない空き家を調査し、所有者に指導や勧告を行うといった条例を制定する自治体が、現在270近くまで増えています。※1

空き家を活用する取り組み

一方、空き家はこうした問題の多い老朽住宅ばかりではありません。ある程度手入れをすれば十分住むことができる空き家も数多くあります。これを有効に活用できれば、環境に無駄な付加を与えないという面からも望ましいといえます。

近年、住まいについて新築・中古に特にこだわらないという人が着実に増えていることから、売却や賃貸で空き家を市場に流通させれば、もっと有効に活用できると考えられます。

図表3:新築・中古別住まいに関する意向

  • (資料)国土交通省2003年住宅需要実態調査、2008年住生活総合調査
    「今後住むとしたら、どのような住宅、立地がよいと思いますか」という設問

実際に、空き家をなるべく流通させて、活用しようとする取り組みが行われています。例えば、「空き家バンク」は自治体に空き家を登録し、その地域で暮らすことを希望する人に空き家情報を提供する制度です。田舎暮らしを希望する都市部の人々の増加に伴って、利用が増えています。

また、東京都世田谷区では空き家活用の相談窓口を設け、空き家を地域で役立てたいとする所有者と、空き家を活用して子育て支援や多世代交流といった活動を行いたい団体とのマッチングに取り組んでいます。2013年度には空き家を活用した地域貢献企画を募集し、採用した企画に、空き家改修費を助成するモデル事業を行い、近親者との死別などによって喪失感を抱えた子どもを支える活動など、3つの団体の企画が採用されました※2。

しかし、このような取り組みは着実に進められていますが、空き家全体からするとまだまだ十分ではありません。さらに空き家を活用するためには、そもそも空き家のままにしている理由を取り除く必要がありそうです。

空き家にしておく理由

使わなくなった住宅を空き家のままにしておく理由についていくつかの指摘があります。例えば、「相続した住宅を相続人同士で処分方法が決まらない」、「いずれ戻って暮らしたいと思っているが、その間人に貸すのは心配」、「売ったり、貸したりするためには家財道具を片付けなければならない」、「更地にした方が管理は楽だが、固定資産税が高くなる」、「先祖代々受け継いだ家を自分の代で手放せない」といったことです。

これ以上問題の多い老朽住宅を増やさず、人々の住生活を支える資産として空き家を有効活用するためには、こうした空き家の流通を阻害する要因を一つひとつ取り除いて、不要になった住宅を売ったり、一定期間使わない住宅を貸したりすることが普通にできる社会を築く必要があります。

  • ※1国土交通省による都道府県への聞き取り調査結果(2013年1月時点で施行済みのもの)
  • ※2一般社団法人世田谷トラストまちづくりホームページ「世田谷らしい空き家等の地域貢献活用モデル事業」

(ニッセイ基礎研究所 塩澤 誠一郎)

筆者紹介

塩澤 誠一郎(しおざわ せいいちろう )

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

都市には固有性があります。そこには物理的な空間特性ばかりでなく、人々の活動がつくりだした環境やそれらの時間的な積み重ねにより形作られた文化が含まれます。そうしたもの全てが都市の個性をつくり、魅力となります。
少子高齢化や低炭素化など都市政策上の課題や都市づくりの理念は共通でも、都市に固有性がある以上、政策手段の行使や計画立案は一様にはならないはずです。こうした課題意識を念頭に、実際に都市のマスタープランづくりや地域のまちづくりに携わった経験を活かして、プランニングやデザインという視点から都市や街、住まいを捉え、望ましいまちづくり、住まいづくり、施設づくりのあり方を社会に問いかけていきたいと考えています。