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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第88回 銀座の地価は5,050万円/uと過去最高を更新

2017年6月1日

地価は回復基調

 2017年の公示地価(※1)は、全国・全用途平均で2年連続の上昇となりました。用途別で見ても、2年連続上昇となった商業地は上昇基調を強め、住宅地は9年ぶりに下落から横ばいに転じました。

 全国で最も地価が高かった地点は、東京の山野楽器銀座本店でした。1㎡あたり5,050万円で、公示地価としての史上最高額を更新しました。しかし、主要都市ごとの最高価格の推移を見ると、バブル期を上回る水準となったのは東京だけです。今回の地価上昇の特徴は、全国的に上昇しているわけではなく、地域によって大きな差があることです。

図表1 主要都市の最高価格の推移

出所:国土交通省「地価公示」よりニッセイ基礎研究所作成

現在の地価動向の特徴

 この特徴は、地価の騰落地点の割合からも確認できます。東京都では約8割の地点で地価が上昇しているのに対し、地方圏では上昇した地点が約2割にとどまり、6割近くが下落しています。

図表2 東京と地方圏の地価上昇・横ばい・下落地点の割合(住宅地)

出所:国土交通省「地価公示」よりニッセイ基礎研究所作成

 しかし、「地方圏」の中でも「札仙広福(さっせんひろふく)」といわれる主要4都市では、ほとんどの地点で地価が上昇しています。そのため、「地方圏」でひとくくりにするのではなく、人口集積が進む中心都市とそれ以外の地域とで見ていく必要があるでしょう。

図表3 地方主要4都市の地価上昇・横ばい・下落地点の割合(住宅地)

出所:国土交通省「地価公示」よりニッセイ基礎研究所作成

 また地価上昇が目立つ中心都市でも、エリアごとに地価上昇率が異なり、選別が進んでいます。東京では、地価の高いエリアほど地価上昇が顕著で、地価が相対的に安いエリアでは上昇が限定的であることがわかります。このように地価上昇の差は、「東京と地方」という二極化ではなく、「どの都市のどのエリアか」という単位で見られます。

図表4 東京都の地価水準と平均地価上昇率の関係(住宅地)

出所:国土交通省「地価公示」よりニッセイ基礎研究所作成

総括と今後のポイント

 今回の公示地価を総括すると、全国平均で見ると地価の回復傾向が続いています。しかし、よく見ると多くの地域が少子高齢化・人口減少による下方圧力にさらされており、全国的に地価が上昇しているわけではありません。人を惹きつけることのできる特定のエリアの上昇が、全体の平均を押し上げました。また地価がバブル期を上回る地点もあり、過熱警戒感も見られます。2020年の東京オリンピックまでは地価が堅調に推移するとの見方もありますが、今後も上昇を維持できるかに注目が集まります。

(※1) 地価公示法に基づいて、国土交通省の土地鑑定委員会が標準値を選定し(2017年は26,000地点)、毎年1月1日時点における標準値の1㎡当たりの正常価格を判定し公示されたもの。

(ニッセイ基礎研究所 佐久間 誠)

筆者紹介

佐久間 誠(さくま まこと)

株式会社ニッセイ基礎研究所、金融研究部、研究員
研究・専門分野:不動産市場、金融マーケット全般