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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第87回 グローバル化って何だろう 〜製造業の海外生産比率は24.3%・過去最高水準〜

2017年5月1日

グローバル化と自由貿易主義

 2016年、英国のEU離脱や、米国大統領選でのトランプ陣営勝利など予想外の事態が世界中を驚かせました。こうした動きから、「グローバル化が後退するのではないか」と懸念する声も聞こえます。このグローバル化とは、何を意味するのでしょうか。

 グローバル化の意味は、世界の経済的な結びつきが深まることです。そして、その根底にあるのが自由貿易主義で、国家は貿易に対しては介入せず自由な対外取引を行わせるという考え方です。

 第二次世界大戦後の世界では、自由貿易が推進されました。1929年の世界恐慌後、世界各国が自由貿易とは反対の保護主義政策(※1)をとったことが、第二次世界大戦の原因の一つとなったためです。

 戦後間もない1948年、関税および貿易に関する一般協定(GATT)が創設され、自由貿易化に向け多国間での交渉が行われました。交渉の中で関税は大幅に引下げられ、8度の交渉を経てGATTが発展的に解消し、1995年、貿易に関する様々なルールを定める正式な国際機関世界貿易機構(WTO)が設立されました。GATT・WTOは関税の大幅な引下げ、非関税障壁の撤廃を始め、国際取引安定、通商ルールの強化に取組みました。また、WTO発足後は知的財産権に関するルールの整備にも取りかかっています。

グローバル化の進行

 WTOの取組みや、2001年の中国のWTO加盟を経て、お金や人、モノ、サービスが国境を越えて活発に移動するようになりました。貿易を通じた商品・サービスの取引きや、海外への投資はこの間大きく増加しており、この時期グローバル化は飛躍的に進んだといわれます。

 その中で日本企業の海外進出も大きく進みました。日本企業の海外現地法人・従業員の数や現地法人による売上げは大幅に増加しています。

図表1 海外現地法人数・従業者数・現地法人売上高の推移

(資料) 経済産業省「海外事業活動基本調査」

製造業の変化

 中でも製造業の生産面で言えばいくつかの変化があります。

 まず、海外での生産が増えたことです。海外生産については、その比率が2016年時点で、24.3%で過去最高水準に達しています。

 そして、その目的も変化しました。1980年代頃の海外生産の目的は、貿易摩擦に対応することでした。そのため、米国や欧州での現地生産現地販売や、アジアでの生産と日本への逆輸入が行われていました。

 しかし近年、日本企業はコスト削減により競争優位に立つことを目的に、生産工程のそれぞれを最適の国に分散させるようになりました。今では、日本から輸出された部品が人件費の低い東南アジアなどで加工・組立てられ、出来上がった製品は他の地域に輸出されています。

 先ほどの海外現地法人数を地域別に見ると、アジアでの展開が大幅に拡大していることが分かります。このようにして、製造業の生産工程は、国を越えて広がるようになりました。

図表2 地域別 海外現地法人数の推移

(資料) 経済産業省「海外事業活動基本調査」

グローバル化のメリット・デメリット

 企業のコスト削減以外にもグローバル化には様々なメリットがあります。先進国での雇用が拡大することや、消費者が低価格で良い物を購入できるようになること、新興国が外資受入れにより経済発展することなどです。

 ただ、最近ではデメリットの方が取りざたされます。グローバル化によって、経済的な格差が広がったとの指摘もあります。冒頭の事態が起きたのは、そうした考えが広がる中でのことです。経済統合のお手本と言われたEUからは英国が離脱し、米国のトランプ大統領はTPP脱退やNAFTA再交渉を宣言、WTOへの批判も行っています。フランスなど、欧州諸国では引続き反EU・反グローバル化を標榜する政党・政治家が台頭を続けています。

 危機感の高まりから、4月11日にはWTO・IMF・世界銀行が共同提言を公表し、保護主義に警鐘を鳴らしました。提言は「自由貿易は生活水準の向上へ不可欠だ」とも指摘しています。世界がこれまでグローバル化の拡大とともに発展を続けてきた事実は揺るぎないものです。自由貿易後退の懸念は払拭されるのでしょうか。今後の米国の通商政策や欧州の国政選挙の行方に注目が集まります。

(※1) 自由貿易に相対する概念が、保護貿易です。保護主義では、自由な対外取引を認めると、低価格の商品が海外から入ってきて、国内産業が打撃を受けると考え、自国産業の保護を目指します。保護貿易の例としては、関税引上げや通貨切下げなどがあります。
1929年の世界恐慌後、各国は金本位制をやめて自国通貨を切下げるとともに、共通の通貨が流通する自国と植民地のみで貿易を行う「経済のブロック化」を進めました。植民地保有で劣る日本や、第一次世界大戦で敗戦し植民地を持たないドイツなどが、植民地の再編を求め軍事行動に出ました。このことが、第二次世界大戦の勃発の理由の一つとされています。

(ニッセイ基礎研究所 牧野 敬一郎)

筆者紹介

牧野 敬一郎(まきの けいいちろう)

株式会社ニッセイ基礎研究所、経済研究部、研究員
研究・専門分野:日本経済