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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第81回 2030年、国内新車には自動運転技術がほぼ100%搭載!?

2016年11月1日

自動運転とは?

 今年8月、米国の大手自動車メーカーが、「2021年に、ハンドルもアクセルもない完全な自動運転車の量産を始める」と発表しました。ハンドルもアクセルもないとは驚きですが、そもそも自動運転とはどのようなものなのでしょうか。

 自動運転には4つのレベルがあり、現在、高度運転支援技術とも呼ばれるレベル2までが実用化されています。冒頭に触れたハンドルもアクセルもない車はレベル4に当たり、「完全自動走行」というドライバーが全く運転に関与しない状態です。

図表1 自動運転レベルの分類 レベル1は加速・操舵・制動のいずれかをシステムが行う状態 レベル2(準自動走行)は加速・操舵・制動のうち複数の操作を一度にシステムが行う状態 レベル3(準自動走行)は加速・操舵・制動を全てシス	テムが行い、システムが要請したときのみドライバー対応する状態 レベル4(完全自動走行)は加速・操舵・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しない状態

(資料)「官民ITS構想ロードマップ2016」より筆者作成

 今、世界の自動車メーカーが完全自動運転実現に向け、熾烈な競争を繰り広げています。日本でも今夏、レベル2の機能を搭載した車が発売されました。また、自動運転技術向けの投資も増えており、今年度の国内大手自動車メーカーの研究開発費は過去最高の見通しと言われています。

 政府は、2025年目途で、完全自動走行システムを実現し、自動運転車・サービスの普及拡大への道筋をつけようとしています(※1)。また、2030年には、安全運転支援装置・システムを国内販売の新車に全車標準整備、ストックベースでほぼ全車に普及させる目標を掲げています(※2)。その中では完全自動運転技術も、かなりの割合を占めるでしょう。

私たちの生活への影響

 完全自動運転車が普及したら、私たちの生活にさまざまなメリットがあります。

 例えば、高齢でご自身では車を運転できなくなった方などでも、車で移動ができるようになるかもしれません。また、道路交通情報のビッグデータと組合わさることで、渋滞解消の効果も期待されています。 2015年の高速道路での渋滞による損失(NEXCO3社及び本四高速における損失)は、年間で約10万人分の労働力に相当し、解消できれば大きなプラス効果です(※3) 。そして、交通事故の減少も自動運転で達成すべき目標です。

 政府は、「世界一安全な道路交通社会」の構築(2020年)、「世界一安全で円滑な道路交通社会」の構築・維持(2030年)という、安全面での目標も掲げています(※4)。

 既に「第10次交通安全基本計画」(2016年3月)で、2020年までに交通事故死者数を2500人以下(※5)とする目標を定め、安全運転徹底を呼びかけており、自動運転の普及でこれを更に後押しする考えです。現在の交通事故原因は、運転操作の誤り・わき見運転・安全確認不足など「安全義務違反」が約60%を占めています。ある意味ヒューマンエラーによって発生しているものが大半で、完全自動運転になれば事故は大幅に減らせると予想されています。

図表2 死亡事故件数の内訳(2006年8月〜2016年8月)安全運転義務が58.95%(その内、漫然運転が16.37% 脇見運転が13.57% 運転操作不適が11.64% 安全不確認が10.31% その他が7.07%) 安全運転義務以外が41.05%

(資料)警察庁ホームページより筆者作成

自動運転への不安

 ただ現状では、自動運転に対する不安も大きいです。

 今年5月には米国でレベル2の機能を持つ車が死亡事故を起こし、議論を呼びました。日本でも、国土交通省の文書で、完全な自動運転は未確立で、運転者が責任を持って安全運転を行う必要があると注意喚起を行っています。

 また、今はまだ想像もつきませんが、自動運転車は情報技術の塊なので、ハッカーにのっとられる危険性も指摘されています。

 こうしたリスクに対応すべく、国際ルールの整備に向け先進国各国が協力しています。今年9月のG7交通相会議で、自動運転技術の早期実用化に向け共同宣言が出されました。安全規制について、米国と日本・EUで対立はあったものの、自動運転技術の早期実用化に向けた各国の協力や、国際連合が進めるサイバー対策の指針の支持が確認されるなど、国際ルールの形成は着々と進んでいます。

 我々の生活に大きな変化をもたらすであろう、完全自動運転車。まずは国際協力のもとでの安全発進を見守りたいですね。

(※1) 内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システム研究開発計画」より
(※2) 内閣府「官民ITS 構想・ロードマップ2015」より
(※3) 国土交通省「高速道路の交通状況ランキング(平成27年)」より
(※4) 内閣府「官民ITS 構想・ロードマップ2016」より
(※5) 年間の交通事故による24時間死者数

(ニッセイ基礎研究所 牧野 敬一郎)

筆者紹介

牧野 敬一郎(まきの けいいちろう)

株式会社ニッセイ基礎研究所、経済研究部、研究員
研究・専門分野:日本経済