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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第79回 自社株買い実施が5兆円を越えた!?(2015年度)

2016年9月1日

昨夏から大きく下落した日本株式

 昨年4月に日経平均株価は2万円を回復。実に2000年のITバブル以来で15年ぶりのことでした。しかし8月中旬以降、株価は下落に転じ、今年2月と6月には一時1万5千円を下回りました。東京証券取引所1部の株式時価総額も、一時は600兆円を初めて超えたものの、再び500兆円を下回っています。短期間に100兆円以上が消失しました(※1)。

 このように株価が下落する中、日本の株式市場で主要な参加者である海外投資家は、日本株式を大量に売っていました。東京証券取引所グループが発表している海外投資家の売買動向を見ると、2015年6月以降はほぼ一貫して日本株式を売却していたことが分かります。特に昨年8月、9月の2カ月だけで、6兆円以上売り越しました(※2)。

図表1 日経平均株価と海外投資家の主体別売買動向

(資料) 日経Needsをもとに筆者作成。海外投資家の売買動向は東京証券取引所グループが公表している主体別売買動向の買付け金額から売付け金額を引いたもの(現物と先物の合算)

自社株買いは活発に

 昨年度、海外投資家が売却しているのもお構いなしに、日本株式を粛々と買い増した人(事業体)がいます。それは株式を発行している企業自身です。株式会社が発行している自社の株式を買う「自社株買い」の2015年度の実施額は、2014年度の3兆円前半から大きく増加し、5兆円を超えました(図表2)。

図表2 東証一部企業の自社株買い実施額の推移

(資料)日経Quickをもとに筆者作成。ただし、2016年度は6月まで。

 自社株買いは株主への利益還元といえます。株主還元といえば、配当というイメージが強いのではないでしょうか。配当は株主全てに一律に還元するのに対して、自社株買いは株式自体を買い取る形で売却を希望する株主に還元します。また、自社株買いは保有し続ける株主にとってもメリットがあります。自社株買いを行うことによって、株主の数が減少するため、今後の株主一人当りの取り分が増えることが期待できるためです。

図表3 株主数と株主一人当りの取り分の関係

 このように自社株買いの実施が増えた背景には、まず企業業績が改善し株主還元の原資となる収益が伸びていたことが挙げられます。それに加えて、株式市場で株主重視の姿勢がより求められるようになってきていることも大きいです。株主から預かった資産を有効活用するため、企業は必要以上に利益を溜め込まず、適切に株主に還元する傾向が鮮明になってきています。2015年度は東証一部全体で減益だったにもかかわらず、自社株買いの実施金額が大きく増加したことは、まさにその表れです。

2016年度も継続するのでは

 2016年度は、今のところ昨年を上回るペースで自社株買いが実施されています。2016年度は現時点で減益の見通しの企業も多いですが、それでも積極的に株主還元を行っていく流れは変わらないと思います。さらに今年2月に日本銀行が導入を決定したマイナス金利政策(※3)は、企業の資金保有意欲をさらに低下させる可能性もあります。そのため、実際に2015年度を超える自社株買いが実施されるかは分かりませんが、引き続き2016年度も自社株買いが活発に行われることが予想されています。

(※1)
(※2)
(※3)

(ニッセイ基礎研究所 前山 裕亮)

筆者紹介

前山 裕亮(まえやま ゆうすけ)

株式会社ニッセイ基礎研究所 金融研究部 研究員
研究・専門分野:運用手法開発(国内株式)