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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第78回 2025年までにスポーツ産業の市場規模を10兆円拡大へ〜最も拡大が期待できるスポーツツーリズムって?〜

2016年8月1日

拡大が見込まれるスポーツツーリズム

 政府は2025年までにスポーツ産業の市場規模を15.2兆円に拡大する目標を掲げています。2012年の市場規模は5.5兆円ですから、10兆円近く拡大する計画です。この15.2兆円は6つの分野での規模拡大を合計した数値で、この中でスポーツツーリズムなど他産業との融合が4.9兆円と、潜在力が高く、最も伸びる分野と見込まれています(図表)。

図表 スポーツ産業の市場規模の拡大目標

(資料)スポーツ庁・経済産業省「スポーツ未来開拓会議 中間報告(2016年6月)」をもとに作成

スポーツツーリズムって?

 スポーツツーリズムとは、スポーツと観光旅行(ツーリズム)を融合させた考え方です。最近多くの自治体で、スポーツを観光資源と捉えて国際競技など観戦するスポーツを誘致しています。また、市民マラソンといった参加・体験するスポーツも各地で開催しています。イベントの観戦や参加だけでなく、その地域ならではのおもてなしを提供することで観光も楽しんでもらい、域外からの消費拡大や観光関連産業の活性化が期待できます。

 例えば、さいたま市で2013年以降開催されている「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」は国内外のトップ選手がロードレースを競います。会場にはフードコートも併設され、さいたま市やフランスの地域産品を販売しており、ご当地グルメも味わえます。来場者は約10万人に上り、レースの模様は世界150カ国以上で放送されるなど、交流人口の拡大やさいたま市の知名度向上に寄与しています。また、市民マラソンで最も大規模な東京マラソンは、毎年約3万6000人が走り、そのうち外国人ランナーは6人に1人を占め、世界的に注目されるマラソン大会の1つとなっています。

空手発祥の地、沖縄の取り組み

 他にも、日本には空手、柔道や相撲といった世界的に知名度の高い伝統的なスポーツがあります。特に空手は世界中で親しまれているスポーツの1つで、国際空手連盟によると競技人口は世界190カ国に1億人いると言われています。空手発祥の地である沖縄では、空手の世界大会が沖縄で2014、2015年と開催され、2014年の大会では、44カ国から324人が出場しました。今年も10月に沖縄での開催が決まっています。

 選手以外にも、本場の沖縄の道場で空手の稽古を受けたいという海外の空手愛好家も多く、道場を紹介する民間団体もあります。空手をきっかけに沖縄の歴史や文化や食、マリンスポーツなどを体験することで、沖縄のファンになり、リピーターも増えています。さらに、来年2017年には道場や空手の歴史を伝える博物館などを備えた沖縄空手会館を開館予定です。空手の観戦や参加、博物館の見学などさまざまな角度から国内外に沖縄伝統空手を発信しています。

消費から体験へ

 2015年の訪日外国人旅行者は2000万人に迫り、今年に入ってからもその勢いは落ちていません。今年2016年は6月5日までですでに1000万人を超え、昨年より1カ月以上早く、過去最高のペースです。

 一方で、爆買いと呼ばれる、訪日外国人の旺盛な消費意欲には陰りも見え始めています。1人当たりの消費金額(消費単価)は2015年7〜9月をピークに減少しています。ただ、この動きは悲観するものではなく、リピーターが増え、観光が都市から地方へ、目的が買い物だけでなく、体験へとシフトしていると捉えることもできます。日本でしか味わえないサービスや文化を体験したいというニーズは今後益々高まっていくことでしょう。

 日本には本稿で取りあげた伝統的なスポーツだけでなく、ウィンタースポーツもマリンスポーツも楽しめ、リバーラフティングや登山などアウトドアスポーツに適した自然も多くあります。世界中を見渡してもこれほどスポーツ資源に恵まれた国はないのではないでしょうか。2020年には数多くの外国人が訪れることでしょう。それが一過性に終わらないためにも、スポーツツーリズムの発展が欠かせません。

(ニッセイ基礎研究所 白波P 康雄)

筆者紹介

白波P 康雄(しらはせ やすお)

株式会社ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員
研究・専門分野:日本経済