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3分でわかる 新社会人のための経済学コラム

第75回 金利がマイナスってどういうこと?その影響は?〜日本銀行が▲0.1%のマイナス金利導入を決定〜

2016年5月1日

日本銀行がマイナス金利の導入を決定

 日本銀行(日銀)は2016年1月29日に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定しました。従来の量的・質的金融緩和(※1)に加え、金融機関が日銀に預けている預金(日銀当座預金)の一部に▲0.1%のマイナス金利を適用します。

 マイナス金利はすでに欧州中央銀行(ECB)が2014年6月に導入していています。現在、そのユーロ圏19カ国に加えて、スウェーデン、デンマーク、スイス、ハンガリー、そして日本の24カ国、世界のGDPベースでは、およそ25%で採用されています。先行する欧州ではユーロ圏で▲0.4%、スウェーデンで▲1.25%、デンマークで▲0.65%、スイスで▲0.75%と日本に比べてマイナス幅が大きくなっています。

10年国債金利が史上初のマイナスに

 マイナス金利の導入発表を受けて、市中金利は大きく低下しました。長期金利(新発10年物国債)は初めてマイナスになり、2月末以降マイナス圏で推移しています(図表1)。

図表1 長期金利(新発10年物国債の利回り)の推移

(資料)  日経NEEDS

 国債は満期になると額面100円が償還されます。金利がマイナスということは国債が額面より高い価格で取引されているということです。満期まで保有していれば、必ず損をしてしまいます。運用利回りがマイナスの資産なんて購入するメリットがないようですが、国債を大規模に買い入れる日銀に、より高値で売ることができるので、マイナス圏でも取引が成立しています。例えば、105円で国債を買って、満期まで保有すれば5円の損をしますが、満期までに110円で日銀に売ることができれば、5円の利益が出ます。

 また、民間企業では、コマーシャルペーパー(CP)と呼ばれる短期社債(※2)を発行して資金調達を行い、利息をもらえるという事例がでてきています。お金を借りた人が利息を受取り、お金を貸した人が利息を支払うという全く逆の現象が起きています。

マイナス金利の効果、副作用は?

 マイナス金利には効果と副作用があります。企業はより低金利で資金を調達できるようになり、設備投資が活発になることが期待できます。個人にとっても、ローン金利が引下げられ、住宅の購入など個人消費の回復が期待できます。

 ただし、預金金利も引下げられ、個人の利子所得は益々少なくなります。また、生命保険会社各社は一時払終身保険について、保険料の値上げや一部チャネルでの販売停止を発表しました。さらに、個人向け国債(新型窓口販売方式)など安全性の高い金融商品の販売が打止めになるなど、個人の運用手段が少なくなってきています。金庫が売れているといった報道もあり、個人の不安が高まっているように感じられます。

 また銀行の収益悪化も懸念されています。利ざや(個人から調達した金利と貸出す金利の差)が銀行の収益源となっています。貸出金利が低下する一方で、すでにほとんどゼロ金利の預金金利を引下げてマイナスにするのは難しく、銀行の経営はより厳しさを増しています。銀行は利ざやだけでなく、手数料による収入を新たな収益源にしようと模索しています。

 2%の物価上昇率を達成するために、日銀は2013年4月に量的・質的金融緩和を導入し、その後も2014年10月に追加緩和、2016年1月にマイナス金利の導入と金融緩和策を進めてきました。マイナス金利政策は今後も続いていくことが予想され、副作用が限定的となり、しっかりと効果が現れてくるのか見極める必要があります。

(注:本コラムは、筆者の個人的見解に基づいて書かれています。)

(※1)
(※2) 企業が資金を調達するために発行する短期社債。無担保で発行でき、償還期間が1年未満であることが特徴です。

(ニッセイ基礎研究所 白波P 康雄)

筆者紹介

白波P 康雄(しらはせ やすお)

株式会社ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員
研究・専門分野:日本経済